世界の石炭火力発電所の半数が、2020年に赤字に陥るという分析結果が出た。新型コロナウイルス・パンデミックにより燃料価格は暴落しているが、それ以上に電力需要の低迷が石炭火力発電事業を直撃する形になりそうだ。
今回の分析は、国際環境シンクタンクNGOカーボントラッカーが実施したもの。同シンクタンクは、3月12日に発表したレポートの中で、2030年までに日本も含む全ての地域で、再生可能エネルギー発電価格が石炭火力発電より安くなると指摘。今回は、続編として2020年の見通しを分析した。
石炭火力発電事業は、2019年からすでに暗雲が立ち込めていた。2019年には石炭価格が前年比8%下落したにもかかわらず、石炭火力発電事業の過剰設備投資と石炭忌避の動きにより、稼働率が大きく低下。41%の発電所でキャッシュフローが赤字となった。同様の分析を2020年の数値でも予測したところ、46%の発電所のキャッシュフローが赤字となることがわかった。
地域別では、キャッシュフローが赤字となる発電所は、中国、EU、米国、トルコで特に多い。インド、ASEANでも多い。石炭火力発電への風当たりが少ない日本ではまだ赤字化はしないという計算となった。だが、日本政府と経団連は、石炭火力発電所の海外輸出を続行する方針。すでに海外では石炭火力事業は利益を出しづらくなってきている。
今回の予測は、国際エネルギー機関(IEA)のデータを活用しつつ、資本コストを算出。石炭原料価格は、ブルームバーグの数値を用いた。原料輸送コストは、カーボントラッカーが開発した輸送コスト・アルゴリズムで算出。石炭火力発電所の運転コストは、2017年から2019年の平均を用いた。カーボンプライシングによる炭素価格計算では、保守的に、既実施及び実施が確定している制度のみを考慮に入れた。世界平均では1t当たり、2.7米ドルの計算となった。
その結果、石炭原料価格が1t当たり1米ドル増減すれば、営業キャッシュフローは1MWh当たり0.4米ドル動くというモデルとなった。さらにEUでは石炭火力発電からガス火力発電への転換コストは、1t当たり9ユーロと算出。EUでは、二酸化炭素排出量取引市場(EU ETS)での炭素価格が、エネルギー需要の減少により、24ユーロから15ユーロへと急落しているが、それでもガスへの転換コストの方が低く、ガス化は進むと見立てた。
但し、新規の石炭火力発電所に関しては、キャッシュフローが赤字化するのは28%に留まると指摘。各国での石炭推進政策を改めるべきとした。
【参照ページ】Political decisions, economic realities: The underlying operating cashflows of coal power during COVID-19
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