国際NGOのOECD Watchは4月9日、経済協力開発機構(OECD)加盟国と、OECDで「OECD多国籍企業行動指針」の浸透を担当している作業部会「Working Party on Responsible Business Conduct(WPRBC)」に対し、新型コロナウイルス・パンデミックの中、OECD多国籍企業行動指針の遵守を企業に求めるよう要求した。
新型コロナウイルスは、以前からのサプライチェーン上の労働者の健康状態や人権、開発に伴う地域コミュニティへの影響等の課題を浮彫りにしていると指摘。WPRBCを構成するOECD加盟国に対し、政府内での議論や新型コロナウイルス関連で各国政府が発するガイダンスが、責任ある企業行動(RBC)に則したものとするよう求めた。WPRBC構成国は現在、OECD加盟国と、アルゼンチン、ブラジル、コロンビア、コスタリカ、エジプト、ヨルダン、カザフスタン、モロッコ、ペルー、ルーマニア、チュニジア、ウクライナ、EU。
また多国籍企業に対しては、サプライチェーン上の課題への対処、加盟国に対しては、既存の商慣行からの脱却を促し、持続可能なビジネスモデルへの転換を要請した。
これまでも社会的に立場の弱い人々は、農業、アパレル、資源採掘、IT等の業界で過酷な労働環境のもと、低賃金で働いてきた。今回のパンデミックを受け、生産の途絶えた工場では、事前通告なしの不当解雇が、逆に必需品の製造工場では、賃金や衛生環境に配慮のない長時間労働が横行しているという。また、資源採掘現場での労働者は、これまでも性別・民族・人種・年齢・社会的地位等による差別に晒されてきたが、新型コロナ渦では約5億人がさらに経済的苦境に立たされると予測した。
OECDの多国籍企業ガイドラインでは、事業全体におけるコーポレートガバナンス強化と、リスク予防・特定・低減のためのデューデリジェンスの実施を規定。すべての企業活動においてステークホルダーに配慮することを定めている。また、どうしても企業が発注をキャンセルしなければならない事態に陥った際には、波及するネガティブインパクトを最小限に留める「責任ある解約」についても明記。新型コロナ禍でも、多国籍企業には労働者とその家族の人権が保護されるよう以下の5ステップを求めた。
- コーポレートガバナンスで優れた慣行を導入
- サプライチェーンの透明性の確保
- 上流サプライチェーンの従業員の解雇やサプライヤーの閉鎖の回避
- 従業員の雇用の保護
- サプライヤー契約が法的にキャンセルが避けられない場合、責任ある解約を徹底
【参照ページ】OECD Watch calls on OECD member and adherent states to ensure businesses act responsibly during the global COVID-19 crisis
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