機関投資家の低炭素経済推進イニシアチブは5月12日、欧州石油・ガス大手6社の二酸化炭素排出パフォーマンス評価を分析したレポートを発表。いずれの企業もパリ協定との整合性のある目標を設定できていないことがわかった。
今回のレポートは、機関投資家大手75機関が参加する低炭素経済推進イニシアチブ「Transition Pathway Initiative(TPI)」が発表。同機関は、英国環境保護庁年金基金と英国国教会National Investing Bodiesが主導し2017年1月発足。現在の加盟している75機関の運用資産総額は18兆米ドル(約1,900兆円)。運営委員会には、米カリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)、AP1、AP3、AP4、PGGM、Railpen、メソジスト教会、Wespath、West Midlands Pension Fundも加わっている。事務局は、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のグランサム研究所。
TPIは、2019年9月にも、石油・ガス企業50社と電力会社59社の二酸化炭素排出量の評価を実施。スコープ1、スコープ2、スコープ3での排出量を算出し、熱量(J)を分母にした原単位排出量を発表していたが、その後欧州の大手企業6社がスコープ3の削減目標を発表。機関投資家から再分析を求める声が寄せられていた。
【参考】【国際】欧米機関投資家イニシアチブTPI、エネルギー関連135社の気候変動対応分析。業界の努力不足(2019年9月21日)
今回の評価対象は、新たな目標を発表していたBP、ロイヤル・ダッチ・シェル、トタル、レプソル、Eni、OMVの6社。TPIの計算では、石油・ガス企業は、2018年から2050年までの間に平均で二酸化炭素排出量を70%削減しなければ2℃目標を達成できない。さらに2℃より十分低くするためには90%削減が必要で、1.5℃目標では100%削減となる。
(出所)TPI
今回の分析では、比較的大胆な目標を出しているのは、ロイヤル・ダッチ・シェルとEni、トタルの3社ということがわかった。一方、BPとレプソル、OMVはパリ協定目標達成に遠く及ぼないということがわかった。OMVは2020年に目標更新を予定している。さらに6社のいずれもが、パリ協定と整合性のある目標を設定できていないことが明らかとなった。
TPIは今回、機関投資家に対し、原油・ガス企業の二酸化炭素排出量削減では、炭素回収・貯蔵(CCS)技術やカーボンオフセット活用に依存しているが、それらの技術が実用化されるかは極めて不透明だと警鐘を鳴らし、機関投資家の分析でもリスク認識するよう伝えた。また、石油・ガス企業に対し、原単位目標だけでなく、総量目標の策定も促すよう提唱した。さらに、二酸化炭素排出量を推進するガバナンス強化と報酬連動についても投資先企業に求めるべきと提言した。
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