米司法省(DOJ)は5月26日、米連邦最高裁判所に対し、米国企業を相手取った強制児童労働に関する訴訟を棄却するよう勧告した。海外での人権侵害に関する訴訟から米国企業を保護する姿勢を見せた。
焦点となっている訴訟は、2005年にカリフォルニア州の裁判所に、提訴した幼少時代に誘拐され、コートジボワールのカカオ農園で強制労働させられていたマリ出身の3人と人権保護NGOのグローバル・エクスチェンジが提訴した訴訟。被告は、同カカオ農園からカカオを調達していた、食品世界大手スイスのネスレ、穀物世界大手米ADM(アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド)、食品世界大手米カーギル。
原告は暴力を受けながら毎日14時間もの無給労働が強いられ、また労働時間外には監禁されていたと主張。これは米国法、そして国際法にも違反しており、企業はカカオ農家に対し金銭を支払い、技術支援もしていたことから不法労働に加担したと訴えている。原告と被告の両者はいずれも譲らず、上訴を繰り返し、訴訟は現在も続いている。
連邦最高裁判所が、同訴訟を受理するか否かについては、1789年に施行された外国人不法行為請求権法(ATSまたはATCA)に基づき、国外で起きた不法労働ついて米国内の裁判所で裁けるのか否かが焦点となっている。同法は、国際法違反を理由に外国人が米国の裁判所で訴訟をする権利を認めている。
2018年10月には、米連邦第9巡回区控訴裁判所が、ATSに基づき、原告による企業を訴える資格を認め、同訴訟を続行する判断を下している。2020年1月になり、連邦最高裁が同訴訟をATSに基づき取り上げるかの検討を始め、トランプ政権下のDOJに対して意見を求めていた。
DOJは今回、同訴訟については米国との十分な繋がりという点で問題があることから、下級裁判所による判定を覆し、同訴訟を棄却するよう最高裁に促した。加えて、ATSは企業を対象に行使することはできないという見解を示した。また、直接的な人権侵害ではなく、その間接的な関与のみであっても個人・企業を訴えられるのかについて明確にするよう最高裁に求めた。
連邦最高裁は多くの場合、DOJの判断に従う傾向にある。最高裁は同訴訟を受理判断を今年の夏までに決断し、もし受理する場合には、今年の10月以降に裁判が始まる。
原告側は、カカオ農家の支援という判断は社内(米国内)で行われており、米国との強い繋がりがあると主張。一方、ネスレとカーギルは同訴訟を棄却するよう連邦最高裁に求めている。
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