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【日本】経産省、低効率石炭火力廃止や輸出厳格化の意向表明。このニュースの読み解き方

 経済産業省は7月2日、低効率石炭火力発電所を2030年度までに段階的に廃止する方針を明らかにした。日本経済新聞が報じた。国内にある石炭火力発電所計140基のうち低効率のものは110基程度。そのうちの9割に該当する約100基が対象になるとみられるという。

 さらに経済産業省は7月3日、梶山弘志経済産業相が記者会見の中で、供給が需要を上回る場合の出力抑制の優先順位を見直し、再生可能エネルギー発電所の出力抑制を極力下げるようにルールを見直すと表明した。また、石炭火力の輸出の公的支援については「条件をはっきりさせていく」と厳格化を明言した。

 これらの一連の経済産業省の発表は、石炭火力発電所を推進してきた従来の政策は大きく違っており、政策が大きく転換するようにも思える。はたして、これらのニュースをどのように読み解くべきだろうか。

 まず、日本経済新聞の報道では、「高効率の新型発電所は維持・拡充する」との記載があり、石炭火力発電の中で高効率石炭火力発電を推進してきた経済産業省の方針と今回の発表が、必ずしも矛盾してはいないという点。具体的な方針は、「有識者会議を立ち上げて休廃止を促す具体的な手法を詰める」ということから、高効率石炭火力発電まで含めた削減に踏み込むかどうかは今後の議論に委ねられることになる。このように今は「固い鉄が溶けた」とも言える状態で、今後の政策についての柔軟性が大幅に上がった。「鉄は熱いうちに打て」と言われるように、将来どのような形状で再度固まるのかという極めて大事な局面となる。

 石炭火力の輸出の公的支援については、今年に入り、環境省と経済産業省の間で鍔迫り合いが続いている。環境省では、小泉進次郎環境省のリーダーシップにより、「石炭火力発電輸出への公的支援に関する有識者ファクト検討会」を設立し、政府政策が時代錯誤になっているというファクトを整理してきた。一方の経済産業省は、「インフラ海外展開懇談会」を設立し、石炭輸出継続の理論武装を行った。環境NGOの気候ネットワーク、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、350.org、Friends of the Earth(FoE)、メコン・ウォッチの5団体は7月3日、現状でも低効率石炭火力発電は政府のインフラ輸出の対象外となっており、今回の方針が低効率にとどまるのであれば進展はなにもないと警告している。

【参考】【日本】環境相、石炭火力発電輸出4要件の見直しで関係省庁と合意と発表。6月末までに結論(2020年2月26日)

 系統での再生可能エネルギー発電所の出力抑制については、現状のルールでも、再生可能エネルギーは火力発電よりも優先されており、原子力発電、水力発電、地熱発電のみが太陽光発電・風力発電よりも優先順位が高い状況にある。そのため、再生可能エネルギーの優先順位を上げるためには、現在原子力発電用に確保されている系統を開放し、再生可能ネルギーが出力抑制をしなくてよくなる状況にするしかない。これができるかどうかが「進歩」と呼べるかのメルクマールとなる。

【参照ページ】【NGO共同声明】 政府の海外石炭火力支援方針の改訂方向性を危惧 ~進行中案件も含めて支援中止を決定すべき~ (2020年7月3日)

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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