日本銀行は7月16日、気候変動に関する日本銀行の包括的な対処方針を決定し、内容を公表した。物価の安定と金融システムの安定という日本銀行の使命に沿って気候変動に関する取り組みを進めると背景を語った。
【参考】【日本】日本銀行、気候変動をマクロ経済課題として扱うことを決定。ようやく他の主要国に倣う(2021年6月20日)
【参考】【日本】日本銀行、気候変動ストレステスト実施に関心。組織横断「気候連携ハブ」を行内に設置(2021年3月26日)
金融政策に関しては、気候変動問題は、中長期的に、経済・物価・金融情勢にきわめて大きな影響を及ぼしうると認識。マクロ経済の安定のために、中央銀行の立場から民間での気候変動対応を支援していくと伝えた。具体的には、気候変動対応での開示を行っている金融機関を対象に、投融資のバックファイナンスのための資金供給制度を年内に新設する考え。
金融システムに関しては、考査・モニタリングを強化。日本銀行も参加する「気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク(NGFS)」や各国当局の動きも踏まえつつ、金融庁と連携しながら、共通シナリオを用いた、ストレステストのような分析を施行する考え。また、開示の面でも、コーポレートガバナンス・コードの改訂を踏まえ。気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)等に基づく開示を金融機関に促す。日本銀行としてTCFDに基づく情報開示を行っていく。
調査でも、気候変動問題が、経済・物価などのマクロ経済や金融市場、金融システムにもたらす影響について分析を深め、情勢判断やリスク把握のためのデータの収集や分析手法の高度化を行う。また、金融市場及び金融市場インフラの機能度を調査し、決済システム・市場基盤整備に関わる課題についても検討する。
国際協調では、G7、G20、東アジア・オセアニア中央銀行役員会議(EMEAP)等の国際会議や各国中央銀行との会合で、多国間の議論へ参画。バーゼル銀行監督委員会(BCBS)、金融安定理事会(FSB)、NGFS等での気候関連金融リスクに関する国際的な枠組みの構築にも積極的に関与していく。データ整備の国際的な動きにも対応していく。
さらに国際的な金融システムへの協力では、グリーンボンド等への投資拡充に言及。すでにEMEAPが設立したアジア・ボンド・ファンドに投資しているが、EMEAP加盟の中央銀行と足並みを揃え、投資を拡充していく。日本銀行の外貨資産保有でもグリーンボンド国債等の購入を進める。
【参考】【国際】東アジア・オセアニア中央銀行役員会議、中央銀行のグリーンボンド投資拡大で合意(2021年7月17日)
資金供給制度(気候変動オペレーション)に関しては、同日の政策委員会・金融政策決定会合で素案も発表している。対象となる資産は、(1)グリーンローン/ボンド、(2)サステナビリティ・リンク・ローン/ボンドのうち気候変動対応に紐づく評価指標が設定されているもの、(3)トランジション・ファイナンスにかかる投融資の3つを提示。供給は、円建てのローンで、利率は0%。マクロ加算残高への「2倍加算」も適用する。貸付期間は原則1年だが、無制限に借り換え可能。2030年度まで継続する。
【参照ページ】気候変動に関する日本銀行の取り組み方針について
【参照ページ】当面の金融政策運営について
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