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【日本】JBICとSMBC、ロシア北極圏の天然ガス開発案件に融資方針。三井物産も出資。新たな火種

 国際協力銀行(JBIC)と三井住友銀行は、ロシア・ガス大手ノバテクが北極海で天然ガス開発計画を進めるLNG輸出プロジェクト「アークティックLNG2」に融資する方針を固めた。日本のメディアが報じた。同案件は、三井物産と石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が出資している。一方で、北極海での石油・ガス採掘については、気候変動と海洋生態系の観点から、すでに欧米では忌避する動きが出ており、石炭に替わる重荷を早速背負う形となった。

 アークティックLNG2は、安部晋三前政権がまとめた国策プロジェクト。安部前首相は2016年5月、ロシア・ソチでのプーチン大統領との日ロ首脳会談で、8項目の「協力プラン」を提示。その一つの案件が「アークティックLNG2」だった。同プロジェクトは、ロシア領の北極海ギダン半島にLNGの採掘プラントを建設し、タンカーで海外に輸出するというもの。2023年の竣工を目指し、年間最大1,980万tのLNGを生産する計画。

 日本からは、JOGMECが75%、三井物産が25%で出資する合弁会社ジャパン・アルクティクLNGを組成(議決権は三井物産が50%強、JOGMECが50%弱)。プロジェクト全体の出資構成は、ノバテクが60%、仏トタル10%、中国石油天然気集団(CNPC)10%、中国海洋石油集団(CNOOC)10%、ジャパン・アルクティクLNGが10%。ジャパン・アルクティクLNGの出資契約は2019年に締結。調印は、日ロ首脳会談の場で、当時の安倍首相とプーチン大統領のもとで行われた。

 アークティックLNG2が位置しているロシア北西部のヤマル地区では、すでに先行して「ヤマルLNG」プロジェクトが2013年に着工、2018年に完工している。こちらは、ノバテク50.1%、トタル20%、中国石油天然気集団(CNPC)20%、中国のシルクロード基金が9.9%。輸出先は主に中国。同案件のEPC(設計・調達・建設)契約では、2013年に、仏テクニップと日揮、千代田化工建設の合弁企業が受注しており、日本とも関係が深い。年間生産は1,650万t。

 ヤマル地区から中国や日本へのLNG輸出に関しては、北極海の氷の影響で、スエズ運河経由の西廻り航路が従来の考え方。しかし、現在、気候変動で北極海の氷が薄くなり、北極海航路が開けつつあり、ロシアは砕氷タンカーの技術を高め、直接東アジアに輸送する東廻り航路も検討している。これに中国や日本が関心を示した形。先行したヤマルLNGでは、中国遠洋海運(COSCO)の子会社がロシアの砕氷タンカー輸送に関与している。

 アークティックLNG2は、総工費2.5兆円。そのうち1兆円強を日本、ロシア、中国の銀行で融資する方向で調整されている。今回の報道で、日本側のシンジケートローンをJBICと三井住友銀行を中心に2,000億円規模の融資をまとめる動きがみえてきた。

 但し、同案件に対しては、シンジケートローン参画を検討していたイタリアのウニクレディトが撤退意向を日本の関係者に通知。また、ノバテクは、オバマ政権時代の米政府が2014年に経済制裁対象に指定。ノバテクの経営に強く関与する実業家ゲンナジー・ティムチェンコ氏も制裁の対象となっている。さらに北極圏での石油・ガス開発に関しては、欧米の金融機関からは自主規制を強化する動きも出ており、出資元の企業にもファイナンス除外が広がる可能性もある。

【参考】【国際】環境NGO、銀行大手の2021年化石燃料融資状況報告書発表。日本のメガバンク3行、依然評価低く(2021年3月25日)

 同案件に関して、三井住友銀行内では、融資に慎重論も出た模様だが、最終的には経済産業省が、所管の日本貿易保険(NEXI)から優遇条件でのカントリーリスク保険を三井住友銀行に提供する形で、押し切った。

 一方、三井物産は、座礁資産化しつつあった石炭火力発電からの撤退を早め、インドネシアのパイトン発電事業の全持分を6月にタイのRATCH Groupに売却したばかり。今後は、国策プロジェクト関与として、安倍前政権中に仕掛けてきた北極海の石油・ガスプロジェクトが火種となりそうだ。

【参照ページ】ロシア・Arctic LNG2プロジェクト参画に関する持分売買契約締結
【参照ページ】ロシア・Arctic LNG2プロジェクトの最終投資決断の実行
【参照ページ】インドネシア パイトン発電事業の持分売却について
【参照ページ】「アルクティクLNG2」プロジェクト、JOGMECや三井物産などへの事業権益売却が完了
【参照ページ】「ヤマルLNG」プロジェクト、日本向け出荷を開始

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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