エネルギー世界大手イタリアのエネル、同社財団のエネル財団、イタリア・コンサルティング大手のThe European House-Ambrosettiの3者は9月3日、2050年までのカーボンニュートラル(二酸化炭素ネット排出量ゼロ)実現と経済性、エネルギー安全保障に関する共同研究結果を発表。カーボンニュートラル政策の加速は、欧州大陸の独立性とエネルギー安全保障の強化に加え、消極姿勢のシナリオ比で経済性があり、雇用創出機会の拡大にも繋がると結論付けた。
エネルとThe European House-Ambrosettiは、2021年9月にも再生可能エネルギー転換政策の進捗とガバナンス課題に関する共同研究結果を発表済み。今回の研究では、「カーボンニュートラル」に着目し、シナリオ別の経済性を分析した。
【参考】【イタリア】エネル等、再エネ転換に関する共同研究結果発表。GDPや雇用でプラス。さらなる加速を(2021年9月16日)
EUは、2050年までに気候変動に左右されないエネルギーシステムを構築することを目標としている。欧州は現状、エネルギーの57%を輸入に依存しており、2000年から2020年の20年間、割合にほぼ変化がない。
今回の研究では、ウクライナ戦争等で国際エネルギー市場の価格が高騰する中、化石燃料輸入に依存するEUの脆弱性が浮き彫りになったと分析。特にイタリアは、欧州で2番目に天然ガスへの依存度が高いと指摘するとともに、イタリアとスペインでは、二酸化炭素排出量削減量が不十分と警鐘を鳴らした。
またカーボンニュートラル政策の加速は、消極姿勢のシナリオよりむしろ必要予算が抑えられるとも分析した。2021年から2050年にかけ必要な投資額は、2050年カーボンニュートラル達成(Net Zero)シナリオでは、イタリアで3.4兆ユーロ(約480兆円)、スペインで2.7兆ユーロ(約394兆円)と予測。消極姿勢(Low Ambition)シナリオでは、イタリアで3.9兆ユーロ(約557兆円)、スペインで2.7兆ユーロ(約395兆円)と推定した。
さらにカーボンニュートラル達成シナリオでは、汚染抑制による病気の減少、生産性向上、早期死亡率の減少、化石燃料コスト削減が期待され、イタリアで3,280億ユーロ(約47兆円)、スペインで2,230億ユーロ(約32兆円)の経済リターンがあると分析。カーボンニュートラル達成シナリオの方が、社会・経済・環境・エネルギー安全保障の観点から大きなメリットがあると強調した。
今回の研究では、カーボンニュートラル達成に向けた前提条件と政策提言も披露。前提条件としては、欧州、国、地方のエネルギー政策や施策の安定性、透明性、一貫性の確保に加え、既存のグリーン・テクノロジーのアップグレード、新たなグリーン・ソリューションの開発、化石燃料補助金の廃止等を挙げた。
政策提言としては、欧州でのエネルギー移行のガバナンスで、強固な協力体制と調和を要請。電力セクターには、再生可能エネルギー発電所の認可手続きの簡素化、エネルギーインフラ工事の促進、需要管理の促進、蓄電設備の導入等を求めた。
交通セクターには、充電インフラの整備手続きの簡素化、電気自動車(EV)関連企業間の連携強化、相互運用性の促進、系統接続時間の最適化、地域公共交通(LPT)のEV化促進等を提案。工業セクターには、環境に優しいソリューションへの技術シフトの支援、直接・間接電化ソリューションの技術移転ラボ設立、デマンドレスポンス・システム構築の法的枠組みの活用等を挙げた。
さらに建築セクターには、ヒートポンプ活用に関する公正で安定かつ透明性ある枠組みを通じ、化石燃料ボイラーの段階的廃止を提案。建物の改修を支援するワンストップショップの設立も求めた。
【参照ページ】"Net zero e-conomy 2050" study by Enel and The European House - Ambrosetti: the acceleration towards decarbonization ensures more effective investments and greater economic, social and environmental benefits
Sustainable Japanの特長
Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。
- 時価総額上位100社の96%が登録済
- 業界第一人者が編集長
- 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
- 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく ログインする※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら