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【国際】34ヶ国政府、今後4年で脱炭素分野に140兆円投資表明。経産省は主導的地位取りに行かず

 米エネルギー省は9月21日から9月23日、各国政府及び企業を招集した「グローバル・クリーンエネルギー・アクション・フォーラム(GCEAF)」を米ピッツバーグで開催。同時に、第13回クリーンエネルギー大臣会合(CEM)と第7回ミッション・イノベーション大臣会合(MI)も開催した。全体で34ヶ国政府とCEO400人以上が参加した。

【参考】【国際】23ヶ国・地域加盟ミッション・イノベーション、4分野で新たなミッション設定。日本はリーダー役なれず(2021年11月24日)
【参考】【国際】英国とインド、鉄鋼とセメントの脱炭素化で国際イニシアチブIDDI発足。政府調達に着目(2021年6月7日)

 CEMは、2010年に発足。現在の加盟国は、日本、米国、EU、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガル、オランダ、ポーランド、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、英国、ノルウェー、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、中国、韓国、インドネシア、インド、メキシコ、ブラジル、サウジアラビア、南アフリカ、アラブ首長国連邦(UAE)、モロッコ、チリ、ロシアの30ヶ国・地域。

 MIは、第21回気候変動枠組条約パリ締約国会議(COP21)の場で有志国が提唱し2015年に発足。現在の加盟国は、日本、米国、EU、ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、オーストリア、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、英国、ノルウェー、カナダ、オーストラリア、中国、韓国、インド、ブラジル、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、モロッコ、チリの23ヶ国・地域。

 米政府は6月、GCEAFに向け、参加国全体でクリーンエネルギー分野に2026年までに900億米ドルの政府投資を提唱。同日までに、オーストラリア、カナダ、EU、フィンランド、フランス、ドイツ、日本、オランダ、ノルウェー、ポーランド、韓国、シンガポール、スウェーデン、UEA、英国から米国事務局に報告があり、コミットメント総額が940億米ドル(約140兆円)に達したと成果を誇った。

 またCEMは今回、複数の分野で加盟国の共同アクションをとりまとめ、「ピッツバーグ・アクション協約(Pittsburgh Action Pact)」として発表した。具体的には、まず、太陽光発電では、サプライチェーンのサステナビリティ、安全、レジリエンスを確保する「Transforming Solar」イニシアチブを発足し、米国、インド、ドイツ、オーストラリア、UAEの5カ国が加盟。国際太陽光同盟(ISA)と国際再生可能エネルギー機関(IRENA)がパートナーとして参加した。IRENAが掲げる2030年までに950GWから1,250GWの水準にまで引き上げることで協同する。

 次に、米国、英国、EU、オーストラリア、ブラジル、チリは、電力システムの急速なカーボンニュートラル化を実現するための行動計画を今後1年以内に策定、発表する意向を表明。各国の計画は、2023年のCEM14で発表される予定。さらに、今回のCEMでは、国立再生可能エネルギー研究所(NREL)がCEMに設置された各分科会の検討成果をとりまとめレポートも発表。電力セクターのカーボンニュートラル化を実現する上での計画、構築、運用のための方向性を示した。同レポートでは、発電-送配電-小売の垂直統合ビジネスモデルは旧式として訣別し、分散型電源を効率的・効果的に需要家に届ける卸売ビジネスモデルに転換するロードマップを提示。これが実行されれば、日本の電力産業モデルは転換を余儀なくされる。ちなみに日本は、同レポートの作成議論にほとんど参加していないとみられる。

 原子力発電では、「社会的公正と経済的エンパワーメントに関する研究インパクト(RISE3)」が発足。米国、英国、カナダ、日本が主導し、米国の国立研究所とグローバル企業が活動が支援する。火力発電から原子力発電や再生可能エネルギーへの転換が社会に与える経済、環境、社会的利益を定量化する。特に原子力発電の影響評価を行う考え。また、CEMの「原子力イノベーション:クリーンエネルギー未来(NICE Future)イニシアチブから、原子力発電電力での水素生成(イエロー水素)を有望な解決策としてレポートも発行された。

 CEMの電力システム・フレキシビリティ(PSF)分科会とフレキシブル原子力キャンペーン(FNC)は、4年間の活動の集大成として最終報告書を発行。実現に向けた方向性を示した。同分科会は、中国、デンマーク、ドイツ、スウェーデンが主導。分科会の活動は終了するが、内容はCEMの国際スマートグリッド・アクション・ネットワーク(ISGAN)と、CEMと国際エネルギー機関(IEA)の技術協力プログラムや、RISE3に引き継がれる。

 重工業分野では、2021年に英政府とインド政府の主導で鉄鋼とセメントのカーボンニュートラルでグローバル規模の協働体制を築くイニシアチブ「工業ディープ脱炭素イニシアチブ(IDDI)」に、米国、カナダ、ドイツ、サウジアラビア、UAEも参加したことが発表された。今後、工業製品のデータ、基準、グリーン調達制度の国際的な調和を実現するための協力体制を検討していく。グリーン調達では、カナダ、ドイツ、インド、英国がグリーン公共調達誓約を発表。政府発注の鉄鋼、セメント、コンクリートで2025年までに二酸化炭素排出量のモニタリングと開示を義務化していく目標を共有。手法を固めていく。

 CCUSイニシアチブ加盟国と世界セメント・コンクリート協会は、セメントセクターのカーボンニュートラル化のための重要な手法として炭素回収を強力に加速するため、2030年までに10の大規模CCUS設置をセメント業界が実施できるようにすることを目指す共同コラボレーション宣言を発表した。CCUSイニシアチブの加盟国は、米国、英国、ノルウェー、サウジアラビアが主導し、EU、日本、カナダ、中国、メキシコ、オーストラリア、オランダ、ナイジェリア、南アフリカ、UAEが参加している。

 自動車分野では、公用車を20235年までに中型・大型車両を含めて100%ゼロエミッション車両(ZEV)化する「共通車両宣言」に、米国、カナダ、ドイツ、ノルウェー、オーストラリア、ニュージーランド、イスラエルが署名。今後も署名を募る。

 船舶分野では、カナダ、ノルウェー、パナマ、UAE、パナマ、ウルグアイが、国際的な官民プラットフォーム「クリーンエネルギー・マリン・ハブ(CEMH)」を発足。国際海運会議所(ICS)、国際港湾協会(IAPH)、クリーンエネルギー海事タスクフォースも提携し、ゼロカーボン燃料の供給拡大に向けたイニシアチブを開発する。今後も参加国を募る。

 バイオエコノミー分野では、2019年をベースラインとし、化石燃料由来の燃料・原料消費量の10%をバイオ由来に転換することを目標とする「バイオフューチャー・キャンペーン」を発足。米国、ブラジル、オランダ、インド、カナダが主導し、英国とフィンランドが参加した。IEAが事務局を務める。

 CEMは今回、政府、企業、財団等から出資を募るファンド「CEMアクション・ファンド」の創設でも合意。クリーンエネルギー分野で野心的でインパクトのあるプロジェクトに投資していく。また発展途上国向けのファイナンスでは、IEA、世界経済フォーラム(WEF)、チューリッヒ工科大学、インペリアル ・カレッジ・ロンドンの4者が、資本コストの状況やリスク推定値、ケーススタディを集約したダッシュボード・ツール「Cost of Capital Observatory」をローンチした。

 他方、第7回ミッション・イノベーション大臣会合では、23ヶ国及びEUは、今後10年間で世界中で221の実証プロジェクトを実施すると発表した。具体的には6つのミッションを立ち上げた。

 まず、2030年までに鉄鋼、セメント、化学等の重工業をカーボンニュートラル化する50の大規模実証プロジェクト「Net-Zero Industries Mission」。オーストラリアとオーストリアが主導する。

 2つ目は、2024年までに再生可能エネルギー80%の電源を既存の系統に接続し、最終的に100%を目指す5大陸での実証プロジェクト「Green Powered Future Mission」。英国、中国、イタリアが主導する。

 3つ目は、2024年までにクリーン水素工業地帯を100ヶ所特定し、バリューチェーン実証を通じてコスト削減につなげる「Clean Hydrogen Mission」。米国、英国、EU、オーストラリア、チリが主導する。

 4つ目は、2025年までに年間1,000t以上の二酸化炭素除去(CDR)プロジェクト1件以上に資金を提供することを約束し、2025年までに合計1億米ドルの資金動員を果たす「Carbon Dioxide Removal Mission」。米国、カナダ、サウジアラビアが主導する。

 5つ目は、2024年までに海運のためのゼロエミッション給油港の青写真を作成し、2030年までに主要公海航路に沿って3大陸で10の大型貿易港を開発し、ゼロエミッション燃料の供給に向けて進展を加速させる「Zero-Emission Shipping Mission」。米国、デンマーク、ノルウェー、世界海事フォーラム、マースク・ゼロカーボン・シッピング研究所が主導する。

 最後が、カーボンニュートラル実現に向けて主導的な役割を果たす最初の50都市を選出し、2024までに300都市に拡大する「Urban Transitions Mission」。EU、世界気候エネルギー首長誓約、共同プログラミングイニシアチブ(JPI)ヨーロッパが主導する。

 日本はMIの加盟国ながら、どのプロジェクトにも主導的な地位を取りに行っていない。CEMとMIへの参加も経済産業省相ではなく、中谷真一・経済産業副大臣だった。

【参照ページ】United States Announces $94 Billion Of Global Public Funding To Accelerate Clean Energy Worldwide
【参照ページ】PITTSBURGH ACTION PACT
【参照ページ】24 governments announce over 200 clean energy projects to demonstrate new technologies in response to climate crises
【参照ページ】Cost of Capital Observatory
【画像】GCEAF

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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