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【国際】大気中のCO2高濃度で植物の栄養素低下。食料供給に新たな懸念。科学誌論文

 国立科学研究センター(CNRS)のアントワーヌ・マーティング研究員らのグループは11月3日、大気中の二酸化炭素濃度の上昇が、植物の光合成の作用に影響を与え、植物の栄養素を低下させるとする論文を発表した。今後の食料安全保障にとって悪材料の科学的見地が紹介されたことになる。

 同論文では、二酸化炭素排出量濃度の上昇が、カルビン・ベンソン回路で光合成を行うC3植物の養分獲得を阻害するいう以前からの仮説を科学的に研究したもの。これまでは原因が不明だったが、硝酸塩の吸収と同化を特異的に阻害することにより、植物組織の窒素含有量を特に低下させるとするメカニズムを解明した。

 もともと、大気中の二酸化炭素濃度の上昇に関しては、プラスとマイナスの双方の効果があると言われている。プラスの効果としては、C3植物の光合成での炭素吸収量が増加。一次バイオマス生産の改善につながると予測されている。そのため、食糧増産や収量改善を目的とし、作物発育の増進として二酸化炭素施用の慣行も定着してきている。だが、理論値よりも発育増進レベルが低いということも指摘されていた。原因としては、非構造糖質の蓄積、Rubiscoを含む葉全体のタンパク質量の減少、Rubisco活性化状態の減少が関連しているとの説明もされてきている。

 反対に、20年以上前から、二酸化炭素濃度の高い環境でC3植物を栽培すると,ほとんどの器官で主要栄養素の濃度が低下し、ミネラル状態に有害な影響を与えるという研究結果があり、近年、証拠が増えてきている。研究結果からは、窒素、リン、カリウム、硫黄、鉄、マグネシウム、亜鉛のいずれの栄養素も減少することが観測。この事態は、作物の栄養水準を下げるだけでなく、土壌生態系にも変化をもたらすおそれがあり、原因究明が切望されている。

 既存の仮説では、炭素の吸収増により他の栄養素の吸収が減少するという「希釈」効果説や、気孔での蒸散が低下し養分輸送が減少するという説もあるが、今回の論文では、強力な証拠がないという点で却下。イオンレベルで養分の獲得・同化の効率が低下しているという説が有力とした。特に、硝酸塩吸収において、短期的には高濃度環境はプラスに作用するが、長期的にはマイナスに作用するというメカニズム研究を支持した。

 同論文では、二酸化炭素濃度が高い環境下での作物の栄養確保を実現する上で、2つの研究手段を強調。具体的には、同環境下で植物の生理機能を制御する遺伝的決定因子の特定と、将来の研究を深めるための自然の遺伝的多様性の確保を挙げた。また、作物だけでなく、森林マネジメントに関しても、近年、短期的に窒素吸収量を上げるために自然林付近に二酸化炭素を意図的に放出する動きも出ているが、長期的にはむしろ養分吸収を阻害するため、森林の機能が低下していくことも危惧されるという。

 同論文は、従来の自然淘汰では、水や温度とは異なり、二酸化炭素濃度に関しては過去類をみない状態のため、生物進化を促す淘汰圧が存在しなかったとと考えられると説明。今後、炭素吸収と他の養分吸収のメカニズムのさらなる研究が必要とした。

【参照ページ】The decline of plant mineral nutrition under rising CO2: physiological and molecular aspects of a bad deal

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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