【EU】EU理事会と欧州議会、一般製品安全規則改正で政治的合意。Eコマース事業者にもリコール責任

　EU上院の役割を果たすEU加盟国閣僚級のEU理事会とEU下院の役割を果たす欧州議会は11月29日、食品以外の製品の安全性に関する一般製品安全規則（GPSR）の改正で政治的合意に達した。今後、立法手続きに入る。Eコマース事業者の義務や、サイバーセキュリティでの製造物責任（PL）等が新たに導入される。

　GPSRの改正は、欧州委員会が2021年6月に政策を発表。1年半をかけ、EU理事会と欧州議会との合意をとりつけた。今回の改正では、まず、「安全な製品」の定義を大きく拡大。子供へのリスク、サイバーセキュリティリスク、ジェンダーリスク等も評価の対象となる。EU域内の製造業者、輸入事業者、流通事業者は、これらのリスクを含めた安全面に責任をもつ場合にのみ販売が認められる。

　その上、改正GPSRは、デジタルサービス法（DSA）と連動する形で、オンラインマーケットプレイス事業者に対しても、各国の監視当局と消費者のための単一の連絡窓口を指定する等の義務を導入する。さらに、各国の監督当局は、オンラインマーケットプレイス事業者に対し、いかなる場合でも2営業日以内に不当な遅延なく安全でない製品の提供の中止またはアクセス不能にするよう命令することができるようになる。オンラインマーケットプレイス事業者は、安全でない製品を無作為にチェックするための合理的な努力義務も負う。

　製品リコールや安全でない製品の提供中止では、製造業者、輸入事業者、流通事業者、オンラインマーケットプレイス事業者は、特定できる影響を受けるすべての消費者に通知する義務を負う。また、リコールの通知では、消費者のリスク認識を低下させるような「自主的」「予防的」「稀な/特殊な状況において」等の表現も禁止される。

　今回の改正により、リコール対象となった消費者は、修理、交換、初期価格と同額以上の適切な返金を受ける権利があることがリコールの通知で明確に通知されるようになる。さらに、苦情や集団訴訟を提起する権利も明確に与えられる。

　欧州委員会は、改正GPSRにより、予防可能な製品関連事故によるEU消費者の被害や医療費を年間115億ユーロ削減できると推計している。

　また、欧州委員会は、GSPR改正とともに、消費者信用指令の改正政策も同時に発表しており、同指令の改正でも、EU理事会と欧州議会は12月2日、政治的合意に達した。こちらも今後、立法手続きに入る。双方の改正は、消費者の保護政策と位置づけられている。

　消費者信用指令の改正では、貸し手は、クレジット契約に署名する前に、消費者がすべての必要な情報に容易にアクセスでき、クレジットの総コストについて通知したことを確認する義務を負うようになる。その上で、貸し手は消費者の信用力を評価する義務を負い、信用残余力を上回る融資は禁止される。

　同指令は現在、200ユーロ以下の融資に関しては適用を除外しているが、今回の改正で対象となる。また、クラウドレンディング・プラットフォームで提供される融資や、後払い決済（Buy Now Pay Later）にも適用される。

【参照ページ】Deal on EU rules to better protect online shoppers and vulnerable consumers
【参照ページ】Council and European Parliament agree to improve protection for consumers applying for credit
【参照ページ】Consumer protection: Commission revises EU rules on product safety and consumer credit

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所