欧州委員会は12月20日、EU反トラスト規則に関する違法調査で、アマゾンが欧州委員会に提出した改善施策を承認した。欧州委員会は、アマゾンがコミットした施策についての履行状況をモニタリングし、不履行が確認されれば、課徴金を課すことができる。
同事案は、マーケットプレイス出品者の非公開データを利用し、同社の事業を有利に展開しているか否かの調査を2019年7月に開始。2020年11月10日は、アマゾンがフランスとドイツの市場において、第三者販売者へのオンラインマーケットプレイスサービスの提供で支配的であると予備的に判断する異議告知書を提出し、その中で、アマゾンがマーケットプレイス出品者の非公開ビジネスデータを活用し、小売の決定を調整していると判断した。
さらに欧州委員会は同日、アマゾンの「Buy Box(カートボックス)」サービスに関する調査も開始。同サービスは、同一商品の販売者が複数いる場合に、アマゾンが購入ボタンで販売者を自動設定しておくというもので、当然、Buy Boxに選ばれた事業者の製品は売れやすく、選ばれないと売れにくいということになる。欧州委員会は、アマゾンの小売事業またはアマゾンの物流・配送サービスを利用している販売者が、Buy Boxに選ばれやすくなっているか否かを調べていた。こちらの事案でも、欧州委員会は、アマゾンが第三者の出品者へのオンラインマーケットプレイスサービスの提供に関し、フランス、ドイツ、スペイン市場で支配力を乱用していると予備的に結論づけている。
これに対し、アマゾンは第1弾の対処施策案を欧州委員会に提出。内容は、マーケットプレイスにおける独立販売者の活動に関連する、あるいはそこから派生する非公開データを、自社の小売事業に使用しないことや、Buy Boxの選定で全ての出品者を平等に扱うこと等。また、Buy Boxでは、選定2番目の事業者の情報も同等に表示することも掲げた。さらに、「マーケットプレイスプライム」制度を通じて入手した第三者輸送会社の条件やパフォーマンスに関するいかなる情報も、自社の物流サービスのために使用しないこと等も打ち出した。
これに対し、欧州委員会は、2022年7月14日から9月9日まで、アマゾンの施策案に関する市場テストを行い、さらに検証を実施。その判断を踏まえ、アマゾンは第2弾の施策案を欧州委員会に提出している。内容は、Buy Box選定2番目の事業者の情報を目立たせることや、独立系運送事業者の配送サービスをアマゾン指定の配送サービスと同等に扱い、ユーザーが選択しやすくすることや、独立系運送事業者のデータをアマゾンが不当に利用できなくすること等を打ち出した。
それを受け、欧州委員会は今回、第2弾の施策案の内容が、競争法上の懸念を払拭できると判断し、承認した。これにより、アマゾンは、現在および将来的に欧州経済領域(EEA)内に開設するすべてのマーケットプレイスを対象とし、今回の施策案を実施する義務が発生する。但し、イタリアでは、競争当局が2021年11月30日に、イタリア市場に関してアマゾンに救済措置を課す決定を先に下していることから、イタリア市場は除外される。
今回の決定は、Primeと競合する2つ目のBuy Boxの表示に関しては7年間、それ以外の部分に関しては5年間有効となり、アマゾンは履行し続けなければならない。アマゾンが不履行を犯した場合、欧州委員会は、EU反トラスト法違反の認定をすることなく、アマゾンの年間総売上高の最大10%の罰金、または違反した日ごとにアマゾンの日次売上高の5%を定期的に支払う罰金を科すことができる。
【参照ページ】Antitrust: Commission accepts commitments by Amazon barring it from using marketplace seller data, and ensuring equal access to Buy Box and Prime
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