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【国際】エネルギー転換で公正な移行への関心高まる。格差拡大阻止や人権リスク対策

 世界的にエネルギー転換が進む中、公正な移行(ジャスト・トランジション)を確実に実施していくことの必要性も認識されつつある。

 国際エネルギー機関(IEA)は8月3日、同団体の常設機関の一つ「エネルギー研究技術委員会(CERT)」のパートナーとともに実施したオンライン・ワークショップの結果を発表。公正な移行(ジャスト・トランジション)に関し、広範な格差への影響を考慮し、綿密な制度設計が必要との見解を示した。

 今回の発表では、カーボンニュートラル型の経済に移行した結果、格差がさらに拡大する可能性が分野があると指摘した。例えば、不動産の省エネ化を進め、省エネ型の不動産の市場価値が上昇した結果、当該地域の家賃が上昇し、低所得世帯の負担が重くなる可能性がある。

 また、再生可能エネルギープロジェクトの移行により電化が進んだ状況で、電気料金の引上げを引き起こす事象が発生した場合、完全電化が進んでいる地域で低所得世帯の経済負担が増すという状況を想定しうる。同様に自動車所有が一般的な国では、燃料価格が上昇すれば、低所得者層も含めて価格影響を受ける。

 これらの格差拡大を防ぐ政策手段としては、低所得層向けの現金給付や省エネ融資等を戦略的に打ち出すことを提唱。また、新興国や発展途上国で、遠隔地や農村部に分散型太陽光発電システムを構築する場合には、コミュニティがこれらのシステムを管理・維持するための技術的専門知識を確実に身につけられるよう、技能訓練を支援し、システム自体にシステムの維持・保守の役割が担えるようにする追加政策が必要になりうるとした。

 同様に、カーボンプライシング政策は、徴収した歳入を低所得世帯向けのプログラムに振り向ける政策で補完すれば、貧困削減に役立つとした。

 政策設計の初期段階でも、新たなデータを活用することで、低所得者向けの影響評価を向上できる。例えば、ブラジルのエネルギー研究局は最近、「電気ジニ指数」を開発し、所得グループや地域間の家電の所有と電力使用パターンに関する定期的なデータを収集することで、エネルギーサービスへのアクセスにおける不平等をモニタリングする方策を導入している。また、電力ジニ係数により、低所得者向けの省エネによる電気料金引下げ効果の大きい家電を特定することにもつながる。

 またISSのESG評価部門「ISS ESG」は8月8日、太陽光発電のサプライチェーンでの強制労働リスクの懸念を指摘したレポートを発表している。特に、中国製の太陽光発電パネルや部材が、中国新疆ウイグル自治区の強制労働に関与しているリスクが高いとした。

 中国はポリシリコンで79.4%、モジュールで75%、セルで85%、ウエハーで97%という圧倒的なシェアを占めており、中国産のポリシリコンは世界の太陽光発電パネルの95%以上に使用されている。新疆ウイグル自治区は、中国産のポリシリコン生産量の54%以上を占めている。

 これらへの対処として、米国では、「ウイグル人強制労働防止法(UFLPA)」が制定され輸入管理を強化するとともに、インフレ抑制法(IRA)では米国産の産業育成に注力している。EUでは、企業サステナビリティ・デューデリジェンス指令(CSDDD)が制定された。しかし、ISS ESGは同制度について、政策レベルで確実にサプライチェーンを可視化することは容易ではなく、同時に強制労働に関与した製品が、規制が緩い市場に流れ込むだけで、世界全体の強制労働リスクは減少しない可能性もあるとした。

 そのためISS ESGは、最終的には、企業自身の方針策定と実行が、人権リスクを懸念する投資家の期待に応えることができると解説。リスク評価と現地監査の双方を実施するべきとした。

【参照ページ】How to maximise the social benefits of clean energy policies for low-income households
【参照ページ】Forced Labor in the Solar Supply Chain: Concerns about the Transition to Renewables

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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