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【国際】米連邦政府、マリファナの医療目的利用解禁の動き。ドイツは娯楽利用も合法化へ

【国際】米連邦政府、マリファナの医療目的利用解禁の動き。ドイツは娯楽利用も合法化へ 1

 米保健福祉省(HHS)の高官は8月29日、米司法省麻薬取締局(DEA)局長宛の書簡を送付し、大麻(マリファナ、カンナビス)を規制物質法のスケジュールIIIに再分類するよう要請した。各メディアが8月31日、一斉に報じた。

【参考】【カナダ】上下院、大麻合法化法案を可決。今年10月にはG7初の大麻所持・使用合法化国に(2018年6月24日)

 規制物質法は、薬物を5段階に分類しており、現在大麻はスケジュールIに分類されている。分類の最終権限は麻薬取締局にある。

  • スケジュールI:医療目的での使用も禁止
  • スケジュールII:医療目的で使用可能だが、厳しい制約が課される
  • スケジュールIII:医療目的で使用可能だが、身体的依存症リスクが低・中程度、心理的依存症リスクが高と認識
  • スケジュールIV:医療目的で使用可能だが、身体的依存症リスクがスケジュールIIIより低いと認識
  • スケジュールV:医療目的で使用可能だが、身体的依存症リスクがスケジュールIVより低いと認識

 スケジュールIに分類されている薬物は、他に、ヘロインやLSD、エクスタシーがある。スケジュールIIにはコカインやモルヒネが分類されている。スケジュールIIIに再分類されると、ケタミン(スペシャルK)、アナボリックステロイド等と同等の扱いとなり、処方箋があれば合法的に入手できるようになる。

 米国では、州政府レベルでは、マリファナの医療目的使用を認めている州が38、さらに娯楽目的での使用を合法している州が23もあるが、連邦政府レベルでは違法。マリファナのスケジュールIからの再分類は、1972年から一貫して主張されてきたが、その都度、麻薬取締局は拒否。しかし、バイデン大統領は、大統領選挙中にスケジュールIからの再分類を政策として掲げており、予想される二期目の選挙の前に政策実現に動いてきたとみられている。

【参考】【アメリカ】全米9州の住民投票で大麻が合法化。大麻合法化州が28州に拡大(2016年12月3日)

 書簡によると、保健福祉省の勧告は、マリファナの分類に関する食品医薬品局(FDA)の広範なレビューに基づいており、国立薬物乱用研究所もFDAの勧告に同意しているという。保健福祉省は、マリファナの包括的な科学的リスク評価を11ヶ月という短期間で完了したことを明らかにしている。米国疾病予防管理センター(CDC)によると、2019年の時点で、米国人の約20%が1回以上マリファナを経験したことがある模様。

 バイデン大統領は2022年10月、マリファナ使用に関する罰則を緩和しにいく新たな政策を発表し、単純所持の連邦犯罪の前科に全て恩赦を適用。州犯罪についても同様の措置をとるよう各州知事に促していた。また保健福祉省長官と司法長官に対し、マリファナの医療用途、乱用の可能性、安全性、依存の可能性に基づき、マリファナを再分類するよう要請していた。一方、トランプ前政権は、マリファナのスケジュール再分類には反対し、州政府が判断すべきとの立場を採っていた。

【参照ページ】【アメリカ】バイデン大統領、全マリファナ収監者に恩赦。所持禁止の規制緩和にも着手(2022年10月9日)

 米国では、連邦法と州法が対立するときに、基本的には連邦法が優先される。しかし連邦政府の米国は、複雑な法体系になっており、州内では州法を優先することができることや、連邦政府は州政府に対しやめさせる権限があることも規定されている。そのため、マリファナを合法化している州と連邦政府はこれまで対立関係にあり、連邦政府は強権を発動して州政府にやめさせることが可能だが、これまでそのような強権発動を連邦政府は控えており、連邦法と州法の相反する形で共存状態となっている。

 ドイツ連邦政府も8月16日、娯楽目的のマリファナ使用と栽培を認める法案を閣議決定しており、国会での審議に入る。同法案は、成人に関しては最大25gの所持が合法化され、最大3株の栽培や非営利クラブに加入しての入手も認められる。ドイツでは、すでに2017年から医療国敵での限定的なマリファナ利用が合法化。さらに18歳から25歳の成人のうち、大麻を一度でも経験していたことがある人は2021年に25%に達し、10年前から倍増している。

 日本政府も、医療目的のマリファナ解禁に向け、大麻取締法の改正を2023年の臨時国会に提出する考え。医療用のマリファナ栽培も解禁する。一方、大麻の乱用を防ぐため、覚醒剤等と同様に「使用罪」も新設するという。従来は、衣料繊維や神事で使用する慣習があり、大麻の栽培、所持、譲受・譲渡等は禁止だったが、使用罪は設けられていなかった。

 一方、大麻の有害物質の構造を一部改変し、「合法大麻」と呼ばれる状態にした成分を含む製品による健康被害が出ていることも、9月3日に報じられている。日本では、マリファナは、葉や花に含まれる成分「テトラヒドロカンナビノール(THC)」が禁止されており、合法大麻は、THCの化学構造を改変し、THCアナログと呼ばれる状態にして販売されている。

 欧米ではマリファナの娯楽目的の解禁までが進んできているが、軽微なマリファナ使用に警察パワーが割かれるのを避け、重犯罪への体制シフトや、商業化することで低品質のマリファナによる健康被害を防ぐ狙いが打ち出されている。

 国際麻薬統制委員会(INCB)は3月、一部の娯楽用マリファナ使用者の間で「健康への悪影響と精神病性障害」を引き起こしていることを示すデータを引用し、娯楽目的のマリファナ利用に警鐘を鳴らしている。国連1961年麻薬に関する単一条約にも反しているとの立場をとっている。

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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