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【国際】G20、ニューデリー首脳声明を初日に採択。インドが「グローバル・サウス」リーダーへ

 G20は9月9日から9月10日、インドでG20ニューデリー・サミットを開催。初日に「ニューデリー首脳声明」を採択する異例な成果となった。首脳声明の採択が困難との前評判もあったが、今回初のG20議長国となったインドは懸念を一掃。初日に首脳声明を採択させたことで、自らの外交力をアピールする場となった。

 インドのナレンドラ・モディ首相は9月9日、冒頭演説を実施。インドは、世界の主要な宗教の発祥地であるとともに、あらゆる宗教を尊重してきた地であることも強調しつつ、「民主主義の母」であるインドは、『世界はひとつの家族である』という意味の『ヴァスダイヴァ・クトゥンバカム』という基本原則に根ざしていると述べた。

 その上で、インド政府は、「環境のためのライフスタイル・ミッション」を開始したことに言及し、気候変動という課題を念頭に置きながら、エネルギー転換は21世紀の世界の重要なニーズとなると言及。その上で、市場メカニズムで、環境分野に資金を動員する「グリーン・クレジット・イニシアチブ」をG20諸国に提唱した。

 グリーン・クレジット・イニシアチブは、モディ首相が6月に政策発表した国内での「グリーン・クレジット・プログラム導入ルール案」が基になっており、企業、協同組合、農業団体、林業団体、個人等が、自然資本分野のクレジット「グリーン・クレジット」を創出し、販売できる仕組み。同導入ルールでは、植林、水、持続可能な農業、廃棄物マネジメント、大気汚染削減、マングロール保全・再生、製品・サービスでのエコマーク、持続可能な建物・インフラの9種類を設けており、一つのプログラムからカーボンクレジットを併用創出することも可能としている。

 他にも、世界バイオ燃料同盟の発足を発表するとともに、すでにインドでは太陽光発電の導入が大規模に進んでおり、インドでは数百万人の農家が自然農法を採用していることも発表。インド国内で「国家グリーン水素ミッション」も発足し、「グリーン成長」を国策として進めていることを紹介した。

【参考】【国際】G20議長国インド、世界バイオ燃料同盟の正式発足を発表。9カ国が発足メンバー(2023年9月11日)

 また、インド宇宙研究機関(ISRO)が月探査機「チャンドラヤーン3号」の月面着陸に成功し、特に水埋蔵の可能性が高い月の南極付近にある「マンチヌス・クレーター」の南東部に世界初の着陸となったことも紹介しつつ、チャンドラヤーン3号から得られるデータは全人類にとって有益なものとなると紹介。さらに、G20諸国に対し、「同じ精神で、インドは『G20環境・気候観測衛星ミッション』の打上げを提案」した。

 今回G20サミットでは、安全保障を巡る議論に関心を集めた。欧米諸国は今回のG20声明を、ウクライナ戦争に対する反ロシア政府への結束姿勢で結束することを狙ったのに対し、新興国側は「グローバル・サウス」の観点から幅広い経済課題について先進国からの協力を引き出すことに重きを置いていた。

 結果、ロシアのプーチン大統領は、国際刑事裁判所(ICC)の検察官に逮捕されることを避けるため欠席し、ラブロフ外相が代理出席。中国の習近平国家主席も欠席し、李強首相が代理出席した。採択されたニューデリー首脳声明では、ウクライナ戦争に関し、「すべての国家は、いかなる国家の領土保全と主権、政治的独立に対しても、領土獲得を目的とした武力による威嚇や使用を慎まなければならない。核兵器の使用や使用の威嚇は許されない」「ウクライナにおける包括的で公正かつ永続的な平和を支援する、あらゆる関連性のある建設的なイニシアティブを歓迎する」という基本姿勢のみで合意。2022年にインドネシアが議長国を務めたG20バリ・サミットでは、「多くの国がロシアによるウクライナ戦争を非難した」との表現が盛り込まれていたが、それらの表現は今回は削除された。

 これに対し、ロシアのラブロフ外相は、G20の議題がウクライナ戦争に「覆い隠させれる」のを防ぎ、インド及びグローバル・サウスにとって大きな成功となったと表明。米国、英国、フランス、ドイツも、武力行使の反対に関する文言が入ったことで、ロシアを孤立化させることに成功したとの立場を示した。一方、ウクライナは「誇れるものはなにもない」とコメントした。

 その他のアジェンダでは、前回のG20バリ・サミットでの首脳声明を概ね踏襲した。アントニオ・グテーレス国連事務総長は、G20ニューデリー首脳声明を歓迎。特に国連持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた進捗を加速させることが謳われたことで、インドがグローバル・サウスと発展途上国の旗手であることが反映されたとインド政府の手腕を称賛した。また、インド政府がアフリカ連合(AU)のG20入りを成功させたことも高く評価した。

【参考】【国際】アフリカ連合、G20常任加盟国入り決定。G20議長国インドが提起(2023年9月10日)

 石炭火力発電の段階的廃止に関しては、前回のバリ・サミット首脳声明を同じく踏襲し、期限を明記しない形で「削減努力のない(Unabated)」石炭火力発電を段階的に廃止するという文言を入れるにとどまった。

 一方、G20の経済業界団体が参加するB20では、8月25日から27日まで「B20インド・サミット2023」が開催され、コミュニケが採択された。コミュニケには、インドネシアでは石炭火力発電所4ヶ所の廃止が決まり、再生可能エネルギーの導入にシフトしていることや、ブラジルでもバイオマス発電への転換や、再生可能エネルギーへの転換が始まっていることが紹介された。インドについては、EV転換が始まっていることに言及された。

【参照ページ】PM Modi's Opening Address At G20 Summit: Full Statement
【参照ページ】G20 New Delhi Leaders’ Declaration
【参照ページ】UN welcomes G20 leaders’ declaration in New Delhi
【参照ページ】B20 India 2023

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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