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世界経済フォーラム(WEF)は1月17日、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で、金融セクター向けの量子コンピューティングによるセキュリティリスクに関するガイダンスを発表した。
同ガイダンスは、デジタル経済から量子経済への転換に向けて金融機関が取るべきアプローチをガイダンスとしてまとめたもの。金融行動監督機構(FCA)と共同で制作した。
金融機関による量子コンピューティングに関する投資額は、2022年の8,000万米ドル(約118億円)から2032年には190億米ドル(2.8兆円)に増加、今後30年間で最大8,500億米ドル(126兆円)に達し、経済効果は2035年までに約7,000億米ドル(約104兆円)と予測。一方で、2032年までに暗号解析アルゴリズムを実行できる大型量子コンピュータが完成し、現在の暗号化アプローチの脅威となるとされている。
【参考】【国際】2032年までに量子暗号解読技術が完成するリスク。GSMAがサイバーセキュリティに警鐘(2023年2月25日)
同ガイダンスでは、量子コンピューティングによるセキュリティリスクに対する4つの原則を提示した。まず、再利用と再目的化。既存のツール、技術、フレームワークや成功した事例を調査し取り入れることを推奨した。
次に、満たすべき要件の確立。規制当局、金融機関等すべてのステークホルダーが連携し、セキュリティ問題に対処するための包括的な要件の定義が必要だとした。
3つ目は、透明性の向上。サイバーセキュリティは競争の場ではなく、金融セクターの基盤としてオープンなコミュニケーションが必要であり、戦略、ベストプラクティス、アプローチに関して積極的な情報交換が必要だとした。
最後に、断片化の回避。市場毎の規制の分断により、グローバル企業が抱える課題が複雑化し負担となる。先進国と新興国の両方に対応できる包括的な規制検討のため、ステークホルダー同士の連携の必要性を訴えた。
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(出所)WEF
また、量子経済の移行に向けたロードマップとして「準備」「明確化」「ガイド」「移行と測定」の4つのステップを提案。準備フェーズは初期段階であり、リスクに関する認識を高め、暗号インフラの現状の理解、内部ケーパビリティの構築を行う。明確化フェーズでは、世界の金融関係者と協力しエビデンス収集と各規制の理解に努め、ギャップを特定する。
ガイドフェーズでは、量子コンピューティングによるリスクと規制のギャップ、標準技術等に関して移行計画を策定する。最後の移行と測定フェーズでは、移行計画を実施しつつ組織のレジリエンスと適応力を高めていくべきだとした。
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(出所)WEF
【参照ページ】New Report Charts Roadmap to a Quantum-Secure Financial System
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