【EU】EU理事会と欧州議会、欧州のための戦略的技術プラットフォーム（STEP）で政治的合意。積極産業振興

　EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会とEU下院の役割を担う欧州議会は2月7日、戦略的産業分野へEU予算を集中投下する政策「欧州のための戦略的技術プラットフォーム（STEP）」で政治的合意に達した。今後、双方での立法手続に入る。

【参考】【EU】欧州委、戦略的産業分野に1.6兆円予算集中投下を提案。産業競争力強化「STEP」（2023年6月24日）

　戦略的産業分野と位置づけられているのは、

• ディープテック&デジタルテック：マイクロエレクトロニクス、高性能コンピューティング、量子コンピューティング、クラウドコンピューティング、エッジコンピューティング、AI、サイバーセキュリティ、ロボット工学、5Gおよび高度なコネクティビティ、バーチャルリアリティ等
• クリーンテック：再生可能エネルギー、電力・熱貯蔵、ヒートポンプ、グリッド、非生物起源の再生可能燃料、持続可能な代替燃料、電解槽・燃料電池、炭素回収・利用・貯留（CCUS）、省エネ、水素、スマート・エネルギー・ソリューション、浄水・海水淡水化、ナノ材料、複合材料、将来のクリーン建材、重要な原材料の持続可能な抽出・加工技術等
• バイオテクノロジー：生体分子と応用、医薬品、医療技術、作物バイオテクノロジー、バイオ製造業等

　欧州のための戦略的技術プラットフォームは、結束基金、InvestEU、ホライゾン・ヨーロッパ、欧州防衛基金、イノベーション基金、復興・レジリエンス・ファシリティ（RRF）等、既存のEUプログラムや基金による重要技術支援のための資金を活用し、積極的な産業振興を図る。

　同制度では、STEPの目標に貢献するプロジェクトに対し、EUの資金調達や他の投資の誘致に役立つ品質ラベルとして「主権シール」を付与。これにより各EU加盟国の政策を、EUのSTEPと紐づけ、積極的な支援の対象と明示できるようにする。さらに、STEP関連プロジェクトの資金調達機会をワンストップで提供する「主権ポータル」も創設される。

　結束基金の活用では、2021年から2027年のプログラム期間中のSTEP優先課題には、100%の協調融資率と30%の事前融資率が適用される。大企業への投資も可能である。これにより、資金繰りの厳しいEU加盟国を支援し、EU全体でSTEPへの資金を振り分けられるようにする。100%の協調融資率は2014-2020年の結束プログラムにも最終会計年度に遡って適用される。

　さらに結束基金を活用するため、欧州地域開発基金（ERDF）で30%、結束基金で37%に設定されている気候変動割当率目標達成のため、一方の基金の「超過プロジェクト」を他方の基金の目標に算入する柔軟性を加盟国に与えた。同時に、欧州地域開発基金からのSTEP投資には、20%の上限が適用される。

【参照ページ】Strategic Technologies for Europe Platform: provisional agreement to boost investments in critical technologies

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所