
欧州委員会は3月12日、気候変動適応の観点から、EU加盟国政府向けに「欧州における気候リスクマネジメントに関するコミュニケーション」を発出した。増大する気候リスクをより的確に予測、理解、対処する方法を示した。
EUでは、欧州環境庁(EEA)が前日の3月11日、EU初の欧州気候リスクアセスメント(EUCRA)の結果報告書を発表。生態系、食料、健康、インフラ、経済・金融の5つに分類し、欧州における36の主要な気候リスクを特定した。その結果、EUが近年経験ているような猛暑、旱魃、山火事、洪水は、楽観的な地球温暖化シナリオの下でも欧州で悪化し、欧州大陸全域の生活環境に影響を及ぼすと見通し、EU加盟国は対処への準備ができていないとも言及した。
今回のコミュニケーションは、EUCRAに欧州委員会として対処するアクションの一貫。「コミュニケーション」は、法的拘束力はないが、EU加盟国政府に対し、政策実行を呼びかける行政的な措置。欧州委員会は発出した内容が実施されているかのフォローアップも実施していく。
今回示した政策は「ガバナンスの改善」「リスクオーナーに権限を与えるツールの改善」「構造政策の活用」「気候レジリエンスに資金を供給するための正しい前提条件」の4つ。
ガバナンス改善では、今後リスクを負うことになる人々を「リスクオーナー」として特定することを重視。国、地域、地方レベルの間で、気候レジリエンスに関する協力を緊密にし、各加盟国が国家エネルギー・気候計画(NECPs)に気候レジリエンスを盛り込むことも促した。
リスクオーナーに関しては、政府、企業、投資家は、気候変動リスクと投資、長期的なファイナンス戦略との相互関係をよりよく理解し、現在のレジリエンスと保護のギャップを埋めるための適切な市場シグナルを提供すべきとした。欧州委員会と欧州環境機関(EEA)は、地域に根ざした重要なデータ、製品、アプリケーション、指標、サービスを提供。緊急事態に対応するため、2025年には、ガリレオ緊急警報衛星サービス(EWSS)を稼働し、地上警報システムが停止している場合でも警報情報を伝達できるようにする。さらに、森林モニタリング法および土壌モニタリング法を制定し、陸上でのデータギャップも埋める。
構造政策では、土地利用計画や重要インフラ計画への気候リスクの統合。気候レジリエンス・ファイナンスでは、EUからの各補助金に関し、前提条件に気候変動レジリエンスの観点を含めていくことを要請した。
セクター別では、自然生態系、水、健康、食料、インフラストラクチャーと建築環境、経済の6つの主要な影響クラスターにおける行動のための具体的な対策も提示した。
【参照ページ】Commission sets out key steps for managing climate risks to protect people and prosperity
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