
米内務省土地管理局(BLM)は4月19日、北極海のボーフォート面に面するアラスカ国家石油保留地(NPR-A)の面積の半分で石油・ガス採掘を禁止する最終規則を発表した。採掘した場、重要な魚類及び野生生物の生息地を著しく破壊すると判断した。
【参考】【アメリカ】内務省、ウィロー石油ガス開発計画を承認。規模縮小かつ周辺を自然保護区指定(2023年3月14日)
今回の措置の背景には、米連邦議会がBLMに対し、海軍石油備蓄生産法(NPRPA)に基づき、石油・ガス開発と、特別地域と呼ばれる場所における重要な資源価値の管理・保護とのバランスを図り、石油・ガス活動が保護区全域の地表資源に及ぼす影響を緩和するよう指示していた。BLMは2023年9月に原案を発表し、パブリックコメントを募集。今回、最終規則を発表した。
NPR-Aは、ブルックス山脈の北西斜面から北極海岸まで広がり面積は2300万エーカー。かつては米海軍が所有していたが、1976年の海軍石油備蓄生産法(NPRPA)改正で、内務省の所有となった。同地域には、40以上の先住民コミュニティが、トナカイ、海岸鳥、水鳥、魚、野生生物を捕獲し、自給自足のための生活資源としている。また、北極圏の自然条件は気候変動により急速に変化しており、トナカイの移動と群れの健康に影響を与える他、永久凍土の劣化や、野生生物、渡り鳥、在来植物の生息地も変化させている。
BLMは今回、先住民族の生活維持と、生態系の保全のためには、アラスカ国家石油保留地での石油ガス開発を制限する必要があると判断。既存の特別地域に含まれる1,330エーカーを保護し、石油・ガス開発や工業開発を制限することを決めた。その一環で、アラスカ国家石油保留地の40%以上に相当する1,060万エーカーが、石油ガス開発のための新規リース禁止地域に指定された。今後、開発ガイドラインを策定し、特別地域における管理要件を明確にし、アラスカ国家石油保留地全域における開発の在り方を制限する。
BLMは、今回の決定の背景になった環境分析結果も公表。アラスカ産業開発輸出公社(AIDEA)は産業開発のため「アンブラー・ロード・プロジェクト」の承認を申請していたが、BLMは環境分析の結果、先住民の自給自足に欠かせない重要な野生生物の生息地と水域を210マイル(約340km)以上またがっており、同プロジェクトの全ての計画案は適切な緩和が不可能な形で重大かつ不可逆的な影響を及ぼすと判断した。その結果、BLMが管理する公有地を横切る道路建設のための通行権AIDEAに認めない「No Action」を選択した。
BLMは同時に、特別地域に指定されている1,330エーカーでの資源価値の追加、特別地域の拡大、新規特別地域の創設を検討することに関するパブリックコメントの募集も行う。
【参照ページ】Biden-Harris Administration Takes Critical Action to Protect Alaska Native Subsistence, Lands and Wildlife
【画像】BLM
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