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【アメリカ】内務省、ウィロー石油ガス開発計画を承認。規模縮小かつ周辺を自然保護区指定

 米内務省土地利用局(BLM)は3月13日、アラスカ国家石油保留地(NPR-A)に関し申請があった石油採掘プロジェクト「ウィロー基本開発計画」を承認した。但し、同省は、コノコフィリップスが1990年代後半頃から取得した石油・ガス鉱区うち、申請された5つのドリルパッドのうち2つを却下。プロジェクト規模を大幅に縮小することも決めた。

 米国では、石油・ガス開発を巡る政治対立が激化しており、バイデン政権が新規開発を基本的に認めない方針を掲げてきたのに対し、鉱区が立地する州政府は連邦政府を相手取る裁判を起こし、連邦政府の政策に対抗している。そのため、バイデン政権は、申請を一部承認しながら、規模を大幅に縮小して承認するという作戦を打ち出している。

【参考】【アメリカ】政府、石油ガス鉱区リース再開も規模大幅縮小。一方、再エネ開発でリース強化(2022年5月3日)

 今回の承認の舞台となっているアラスカ国家石油保留地は、地図上はアラスカ州内だが、連邦政府の管轄地域となっており、内務省が土地リース契約や採掘ライセンス付与を担当している。アラスカ州の北部は、西側から、アラスカ国家石油保留地、アラスカ州管轄の石油ガス開発地区、北極野生生物国家保護区(ANWR)と並び、その東側はカナダとの国境となる。アラスカ州管轄の地区からは、アラスカ州を南北に縦断する総延長約1,300kmの石油パイプライン「トランス-アラスカ・パイプラインシステム(TAP)」が敷設されており、南部のバルディーズ港から海上輸送できるインフラが整備されている。TAPは、1974年に工事が始まり、1977年に完成した。

 アラスカ国家石油保留地は、1923年に当時のハーディング大統領が海軍燃料を石炭から石油に転換するための連邦政府書簡の保留地として確保。1976年に所有権が海軍から内務省に移った。面積は95,000km2と広大で、全米最大の未開発エリアとも言われている。周辺はコノコフィリップスが採掘権を確保しており、すでにアラスカ州管轄側では石油ガスの開発が始まっている。今回のウィロー開発計画は、アラスカ国家石油保留地の北部にある「ベア・トゥース地区」に位置するウィロー鉱区での開発計画。同社は、ウィロー鉱区の土地リース権を1999年に獲得。2016年からの探査井試掘調査の結果、ウィロー鉱区は、埋蔵量が約6億バレルあり、ピーク時には日量18万バレルを生産できると見立てている。BLMによると、80億米ドルから170億米ドルの収入が見込めるという。アラスカ州の中でも過去数十年で最大規模の開発プロジェクトと目されている。


(出所)ConocoPhillips

 同社は2018年5月、ウィロー開発計画で、5つのドリプパッド(各50油井)及び関連の道路やパイプラインの建設・運営の許可をBLMに正式に申請。2019年8月にはアラスカの先住民族との協議を経て、計画案を公表した。当時のトランプ政権下のBLMは2020年8月に開発を承認。だが2021年8月、アラスカ州連邦地方裁判所は、BLMの承認での環境アセスメントに関し、石油ガスからの二酸化炭素排出量や、保留地の生態系保護の考慮に不備があるとし、承認を取り消し、追加の環境アセスメントをBLMに命令。その後同社は、BLMとも協議し、ドリルパッドを5つから3つに減らす案を提出。2月1日のBLMの専門委員会は、3つのドリルパッド建設を認め、1つを将来の検討事項する勧告を採択。最終的に今回、正式に承認された。コノコフィリップスは当初、計画が想定以上に縮小された場合は、計画の全面中止も辞さないとの立場も示していたが、今回承認された内容は歓迎している。

 今回のBLMの発表では、採掘許可申請が提出されていた面積のうち40%が縮小。コノコフィリップスは、ベア・トゥース地区の北端と南端に位置するテシェクプク湖特別地域内の約2.8haの土地リース権を放棄した。これにより、ベア・トゥース地区の環境フットプリントは3分の1に減少したという。淡水利用は減少、約18kmの道路、32kmのパイプライン、133エーカーの砂利等の建設がなくなり、野生カリブーの移動や地域コミュニティへの潜在的影響が軽減されたと述べた。

 BLMは、ウィロー開発計画の承認の前日に、アラスカ国家石油保留地のうち、約526万haを特別地域に指定し、生態系を保護する新ルールを発表。テシェクプック湖、ウトゥコク高原、コルビル川、カセガルク・ラグーン、ピアード湾を特別地域とし、将来の石油ガスのリースと資源開発を制限するとした。さらに、北極海の一部であるボーフォート海のうち約113万haを、石油ガス・リースの無期限禁止地域に指定する計画の伝えた。今後パブリックコメントも募集する。

 アラスカ州は石油ガス開発が盛んな地域で、地元には経済的理由から歓迎する声も多い。但し、従前のアラスカ州管轄地での採掘では、ロイヤリティと石油税の双方がアラスカ州政府の歳入となるが、ウィロー開発計画は連邦政府管轄地のため、アラスカ州政府の歳入にはならない。連邦政府は、リース収入の半分を地元ノーススロープ地域のコミュニティに配分する特別助成プログラムに投じることを決めている。地元の先住民族でも、今回の開発計画に関しては、賛成派と反対派に分かれている。

【参照ページ】Interior Department Substantially Reduces Scope of Willow Project
【参照ページ】Biden-Harris Administration Announces Sweeping Protections for Up To 16 Million Acres of Land and Water in Alaska
【画像】BLM

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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