
国際的な携帯電話通信業界団体GSMアソシエーション(GSMA)は7月16日、アフリカの経済成長と気候変動にインパクトを与える90の人工知能(AI)アプリケーションを分析した報告書を発表した。
同報告書は、ケニア、ナイジェリア、南アフリカから約90のAIアプリケーションを分析し、AIがアフリカの社会、経済、気候変動にインパクトを与えるユースケースについて分析した。世界のAI市場においてアフリカが占める割合は2.5%しかないが、AI活用の経済効果は2030年までに2.9兆米ドル(約456兆円)となる可能性がある。
同報告書では、アフリカでのAI活用分野に関し、農業分野が49%、気候変動対策が26%、エネルギー分野が24%と見立てた。アフリカでは、労働人口の52%が農業に従事し、GDPの平均17%を占めており農業でのAI活用が晋とした。一方、ユースケースにおける生成AIの割合は3%程度にとどまった。
アフリカの零細農家では、伝統的な農法で生産されていることが多く、収量の増加に役立つ情報へのアクセスが不足しがち。AIサービスにより、機械学習を活用した情報提供サービスや、データを活用した生産性の最適化のためのアドバイスを提供している事例が多い。この場合、モバイル端末を介して農家に情報提供がされるため、端末の所持の有無、デジタルスキルやリテラシーの有無、サービスの使い勝手が課題となる。
気候変動対策のアプリケーションは、自然災害に対する予測システム、生物多様性のモニタリング、野生動物の保護に活用されている。世界の温室効果ガス排出量のアフリカが占める割合は3%未満だが、気候変動はアフリカに大きな影響を与えており、対策をしない場合2050年までにアフリカのGDPが8%減少する可能性がある。データが不足しがちな地域であっても、機械学習のモデル改善やリモートセンシング、衛生技術の発達により予測精度が大幅に改善しているとした。
アフリカでは、エネルギーへのアクセスと信頼性に大きな課題があり、人口の約半数が電気を利用できない。この課題を解決するアプリケーションとして、スマートエネルギー管理、エネルギーアクセス評価等のサービスが提供され、電力供給インフラとオフグリッドシステムが改善されている。今後の品質改善のため、インターネットの利用拡大、携帯電話ネットワークの強化、AI活用に必要なデータの整備を行うことが重要と強調した。
今後のアフリカでのAI活用の課題として、まず、データの準備を挙げた。現在多くのAIモデルが先進国中心のデータで生成されているため、アフリカ市場のニュアンスを反映することが重要と指摘。様々な現地語データにも対応すべきとした。
AI開発には、データセンターとGPUも重要となる。AIアプリケーションが拡大するにつれ、データセンターのエネルギー需要やハードウェア、ソフトウェアのコストは上昇する見通し。アフリカではすでにデータセンターの不足が顕在化しており、南アフリカやケニアではGPUのコストが異常に高騰している。
解決策として、エッジ・コンピューティングシステムの活用を提案。アフリカではモバイルファーストな市場であるため、モバイル端末上で高度なタスクを実行するエッジ・コンピューティング技術を開発することで、データセンターへの依存を減らすことができる。スマートフォンの普及率は2022年の51%から2030年には88%に増加すると予測されており、モバイルベースのエッジ・コンピューティングはアフリカのAI普及の中心となるとした。
【参照ページ】New GSMA report reveals huge potential for AI to support Africa’s socio-economic growth across agriculture, energy and climate
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