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【ベトナム】コーヒー農家の支援を通じてベトナムの水問題解決を目指すネスレ

今回ご紹介するのは、ネスレが SDC(Swiss Agency of Development and Cooperation)らと共同で実施した、ベトナムにおけるコーヒー豆生産に関する研究とその成果に関する動画だ。ネスレは現在ベトナムで農家支援プログラムを展開しており、技術支援や生産性向上トレーニングなどを通じて現在12,000以上のコーヒー農家を支援している。

ベトナムは世界最大のロブスタコーヒー豆の輸出国であり、輸出総額は年間10億USドルを超え、ネスレにとっての最大の調達国でもある。ロブスタ種は日本でも最も流通しているコーヒー豆の品種だ。ベトナムのコーヒー産業は雇用の増加に貢献しており、国内最大の産地となっているベトナム中央の高地に位置するDak Lak 地方もその恩恵を受けている。

しかし、それと同時にいくつかの課題にも直面している。その中でも最も懸念されているのが、過度な灌漑による水資源の酷使だ。ベトナムの高地では水資源の96.3%が農業用水として使用されており、その中でも30%以上をコーヒー農家が占めている。そのため、水不足はコーヒー豆を栽培している地域で特に深刻な問題になっているのだ。

Dak Lakでは地下水の水位の低下に加え、乾季には地下水がひどく枯渇し給水制限が実施されるなど、家庭にも悪影響を及ぼしている。

また、 ベトナムでは過去50年間で平均気温が0.7度も上昇している。Dak Lakに40年以上住んでいるある農家は、「昔は温暖な天候に恵まれて、豊作だったが、近年は不安定な風雨や長い干ばつが農家に大きな損失を与えている」と語る。

さらに、Dak Lakの全ての地下水資源のうち71%は既に開発されていると予想されており、現在急激に経済成長しているベトナムだが、水資源の酷使と気候変動による農業への損害のため、将来が不安視されている。

ベトナムのロブスタコーヒーは他のコーヒー生産国とは違い、1月から4月までの間に3回灌漑が行われる。従来、コーヒー農家は「水を多く撒けば収穫量も増える」という考え方から、各植木につき1回に1,000リットルもの水を撒いていた。

しかし、今回ネスレと共同でプロジェクトを実施したWASI(Western Highlands of Agriculture and Forestry Science Institute)、IWMI(International Water Management Institute:国際水管理研究所)、持続可能なコーヒー専門のコンサルティング会社EDE(Epping Consulting)らの研究により、各植木につき1回に400リットルの水さえあれば、少なくとも同程度の生産量が見込めることが判明した。

もし、全てのコーヒー農家が従来の1,000リットルではなく400リットルの水を撒くことにすれば、50%もの真水を節約できると予想されている。これにより水不足が解消されるだけではなく、飲用水の確保、そして環境保護にも貢献する。また、エネルギーコストと人件費も削減することができる。

ベトナムでは現在、コーヒー栽培の発展のため、この新しい灌漑法を基にした持続的なコーヒー栽培法を導入しており、官民共同でコーヒー農家の灌漑慣行改善に取り組んでいる。現在のところ、初期の成果はとても良好とのことだ。

ネスレにとって、コーヒー豆の持続可能な調達は自社の事業を大きく左右する重要な問題だ。
そして、コーヒー豆の持続可能な調達を実現するためには、サプライヤーの持続可能な農業慣行と水利用が鍵を握る。

実際にネスレが掲げるCSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)においても「水資源」「農業・地域開発」は「栄養」と並んで三大注力分野に指定されている。

水資源については、農家などのサプライヤーと協力して「ネスレ持続可能な農業イニシアチブ(SAIN)」を展開しており、2012年にはベトナム以外にもオーストラリアや中国、インドなどで水の利用効率を上げるためのプロジェクトを実行している。

また、現在ネスレの製品に使用されている原料の生産を直接契約している農家は約69万軒あり、工場の73%は農村部に立地しているため、同社は農業・地域開発についても積極的に取り組んでおり、地域開発のマネジメントから財政面の支援、人権の尊重、責任調達にいたるまで取り組みは幅広い。

今回ご紹介したベトナムのコーヒー農家における灌漑慣行の改善プロジェクトもその中の好事例の一つだが、自社のバリューチェーンを通じて社会課題の解決に取り組んでいる同社の姿勢から学べる点はとても多い。

【企業サイト】ネスレ

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