気候変動問題に取り組む国際NPOのCDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)は11月11日、オーストラリアのシドニーで行われたAsia Pacific Rainforest Summitの中で、グローバルの森林破壊とサプライチェーンリスクに関する報告書、”Deforestation-free supply chains: From commitments to action”を発表した。
現在、世界の森林破壊の主たる要因となっているのは牛、パーム油、木材、大豆という4つの農畜産物に対する需要だ。これらのコモディティは食品から燃料にいたるまで様々なセクターを越えた無数のサプライチェーンで取り扱われている。その結果、森林破壊は気候変動の主たる要因として温室効果ガス排出量の約10-15%を占めているという。これは運輸セクター全体の温室効果ガス排出量に匹敵する量だ。この10年間で世界の森林は毎年1,300万ヘクタールずつ失われており、産業界は早急に商品とコモディティと森林破壊、気候変動の関係を断ち切る必要性に迫られている。
CDPは現在過去6年分の企業の森林リスクデータを保有しており、合計15兆ドルの運用資産を持つ240の機関投資家に代わり、企業に対して森林リスクに関する情報開示を要請している。
今回CDPが発表した報告書は、Asia Pulp & PaperやCargill、Unileverなどを含む世界中の152企業の森林リスクに関する情報開示状況を分析している。CDPは、企業はサプライチェーンにおける森林破壊ゼロにコミットすることは自社を気候変動リスクから守る上で最初のステップだということを理解している一方で、コミットメントから具体的な行動にいたるまでには未だに課題が多いと指摘している。報告書の主な内容は下記の通りだ。
- リスク認識と具体的なアクションとの間に一貫性がない:コモディティおよびサプライチェーンの双方を通じて、企業はリスクと機会の評価と行動との間に一貫性を欠いている。例えば、大豆製造企業の83%は大豆のリスクを認識していても、その事業上のリスクを特定している企業はわずか35%しかない。
- 企業は森林破壊対策に機会を見出している:未だ多くの企業は森林リスクに対する全体戦略を用意できていない一方で、CDPの森林データは、約90%の企業が少なくとも1つの森林リスクを含むコモディティの持続可能な調達に関する機会を特定している。
- 森林リスクの対処に失敗する企業は競合優位性を失う:CDPフォレスト・プログラムを通じて企業に情報開示を要求する投資家の署名数は30%増加しており、投資家からの森林リスクに関する関心はますます高まっている。
同報告書の発表を受けて、Hermes Investment ManagementのHead of UK Engagementを務めるFreddie Woolfe氏は「Hermesのような長期志向の機関投資家にとって、気候変動は構造的かつシステマティックな形で我々の投資している市場に影響を及ぼしているという意味で、我々のポートフォリオの価値の根幹をなしている。我々は、企業に森林破壊に対する強いコミットメントをさせ、彼らのサプライチェーンから持続不可能な事業慣行を取り除くように働きかけていく」と語った。
Woolfe氏のコメントにあるように、今後は気候変動に関連してサプライチェーンにおける森林リスクについても投資家やステークホルダーからの情報開示要求がますます高まっていくと予想される。森林破壊の主要因となっているコモディティと深い関わりを持つ企業にとっては、自社のサプライチェーンが抱えるリスクをどう管理し、新たな機会に変えていけるかが重要となる。
【レポートダウンロード】Deforestation-free supply chains: From commitments to action
【参照リリース】Deforestation in supply chains leaves business exposed
【団体サイト】CDP
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