環境保全を対象としたインパクト投資に関する初めての調査により、2009年からの5年間で同分野の市場規模は約230億ドルに急成長していることが分かった。また、そのうち約20億ドルは民間投資が占めており、現在は年間平均26%ずつ成長中で、2018年までに56億ドルを超えると予想されているとのことだ。
同調査結果は、米国金融大手のJPMorgan Chase & Co.が投資ファンドのEKO Asset Management Partners、環境保護団体のThe Nature Conservancyらと共同で実施した研究調査報告書“Investing in Conservation: A landscape assessment of an emerging market“に基づくものだ。
同報告書は、環境保全に関する民間投資額は2014年からの5年間で3倍以上に増加すると予想する一方で、未だ大部分の民間資本は同分野に投資されておらず、リスク調整済の投資機会をより大幅に増やす必要性がある点を指摘している。なお、この5年間で投資された約230億ドルの主な投資対象分野は下記3つに集約されるとのことだ。
- 水量の水質の保全:流域保全、水資源保護、暴風雨対策への投資、流域保護に関する信用取引などを含む
- 持続可能な食糧および繊維の生産:持続可能な農業、林業、養殖業、漁業への投資を含む
- 住環境保護:沿岸部の浸食を防ぐための海岸線保護、森林保護、用地権、ミティゲーション・バンキングなどを含む
また、同調査により明らかになったその他の重要事項は下記の通りだ。
- 民間投資は今後5年間で15億ドルを準備しており、追加で41億ドルを投資する予定
- 既に民間から約20億ドルの投資が実施されているが、その80%は10の投資家で占められている
- 環境保全を目的とするインパクト投資の市場規模は今後5年間で371億ドル拡大する見込み
- 上記の3つの投資分野のうち、民間投資家は持続可能な食糧・繊維の生産に12億ドル投資している一方で、開発系金融機関は大部分を水質・水量保全に投資している(150億ドル)
- 調査回答者は、投資可能なプロジェクトと投資機会の不足に言及しており、リスクに対する利益率が妥当な案件の増加、より熟練した運用チームの必要性を指摘している
インパクト投資は、グローバルにおける環境保全に向けた資金不足を補う1つの有効な方法だ。Global Canopy Programmeの報告書によると、世界の環境保全計画には年間で約3,000億ドルの投資が必要だが、現状では、主な資金源は政府や行政機関、慈善活動となっており、その総額は約500億ドルにすぎないという。
環境保全のためのインパクト投資機会の不足に対処するために、今後、JPMorgan Chase & Co.らは更に民間資本の呼び込みを加速できる投資商品の組成に向けて協働していく予定だ。例えばThe Nature Conservancyは今年、JPMorgan Chase & Co.の協力を得て環境保全に向けたインパクト投資の専門部門Nature Vestを設立しており、今後3年間で約10億ドルを投資する予定となっている。
環境保全に関する投資は主に開発系の金融機関らが主導しているが、徐々に流れは変わり始めてきている。リスクに見合うリターンを期待できる魅力的な投資商品を用意し、より多くの民間投資を同分野に呼び込むことができれば、環境分野におけるインパクト投資は更に加速し、好循環が生まれる。今後の市場の伸びに更に期待したいところだ。
【レポートダウンロード】Investing in Conservation: A landscape assessment of an emerging market
【企業サイト】JPMorgan Chase & Co.
【企業サイト】EKO Asset Management Partners
【団体サイト】The Nature Conservancy
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