近年では世界の大企業の多くが環境負荷の削減に取り組んでいるものの、現状それらの努力は大きな変化をもたらしていない。GreenBiz GroupとTrucostは先日公表した報告書”State of Green Business 2015”の中で、企業のサステナビリティ活動に対する厳しい現状を指摘した。
今年で8度目の公表となる同報告書は世界の上場企業による環境問題への取り組みの進展状況を図るもので、GreenBiz Groupによると、今年の傾向は前年と変わらず、依然として大企業による環境への取り組みの進展状況は横ばいもしくは減退状況にあるという。
GreenBiz Groupで編集長を務めるJoel Makower氏は「今年度の報告書は厳しい現実を突きつけている。多くの企業がサステナビリティを自社の事業に統合するために取り組んでいることは、実際には変化をもたらしていない」と語った。
同報告書は、サステナビリティ調査会社のTrucostが実施した世界の大企業4,800社を対象とする調査に基づいており、対象企業だけで世界全体の時価総額の93%を占めている。
TrucostのCEOを務めるRichard Mattison氏は「資源の効率化における昨今の改善は歓迎するべきものだが、現状では経済成長と環境破壊の結びつきを断つ上で十分とは言えない。結果として、持続可能ではない自然資本の消費リスクは増加している」と語った。
同報告書は、企業による取り組みが停滞している1つの理由として考えられるのは、いわゆる”Low hanging fruit”(手に届く果実)、つまりほとんどの企業が自社施設など自身で管理しており、環境負荷削減の取り組みにより魅力的な財務リターンが期待できる分野には取り組んでしまっているという点だと指摘している。
しかし、実際には最も自然資本への負の影響を与えているのは大企業自身ではなくそのサプライチェーンであり、それらのサプライチェーンは多くの場合、企業の直接管理下から遠く離れているため、インパクト削減に取り組むのにとても難しい。サプライチェーンに対する関心は日に日に高まっているものの、未だ自社のサプライチェーンがもたらしている影響を完全に把握している企業は少ないのが現実だという。
一方で、報告書の中にはいくつかの前向きなニュースもある。Matiison氏によれば、「より持続可能なビジネスモデルの開発に向けてより実践的な取り組みを進める企業の動きが活発化している」という。とりわけ、「より多くの企業がサステナビリティを事業に統合させるために自然資本の概念を取り入れるようになってきており、自然資本のイニシアチブに参画した企業の数は85%増加し、300社に達した」とのことだ。
さらに、同報告書では2015年度のサステナビリティビジネスに関する10のトレンドも紹介しており、ストランデッド・アセット(座礁資産)に対する企業やグローバル経済の潜在的な責任の高まり、オープンで分散されたサステナビリティソリューション、サプライチェーンの透明性の向上、科学的根拠に基づくサステナビリティ目標の設定、グリーンボンドやその他のサステナブルエネルギーへの投資を促進する金融商品やビジネスモデルの市場拡大、グリーンインフラの拡大などが2015年のトレンドとして挙げられている。
ビジネスにおいてサステナビリティが一層の重要性を増す中で、企業は取り組みやすい内容だけに留まるのではなく、サプライチェーン全体も含めたサステナビリティ課題に真摯に向きたい、本当の意味で成果を生み出せるかどうかが問われている。レポートの詳細は下記からダウンロード可能。
【レポートダウンロード】State of Green Business 2015
【企業サイト】GREENBIZ GROUP
【企業サイト】TRUCOST PLC
Sustainable Japanの特長
Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。
- 時価総額上位100社の96%が登録済
- 業界第一人者が編集長
- 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
- 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく ログインする※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら