ドイツのボン大学が、フェアトレードラベルの表示が消費者の支払意思と味覚にもたらす影響に関する興味深い研究結果を公表している。オンライン科学ジャーナルのFrontiersが9月8日に掲載した記事によると、ボン大学の最新の研究により、フェアトレード表示は消費者の支払意思を高め、味覚にも好影響を及ぼす作用があることが分かったという。
ボン大学は従来の研究によりオーガニック商品のエンブレムは消費者の支払意思額(Willingness to Pay:WTP)を増加させ、腹側線条体を活性化させる作用があることを突き止めていたが、最新の研究ではフェアトレードラベル表示が人々に与える影響について神経系メカニズムと行動プロセスの側面から調査した。
今回の研究では、40人の被験者がMRIスキャナーの中でフェアトレード表示がある製品とそうでない製品も含む様々な製品に対して価格入札をするという実験が行われた。その結果、被験者らのWTPはフェアトレード製品に対して約30%高くなることが分かったとのことだ。さらに被験者らはフェアトレードのロゴを見たときに報酬の処理と関連する領域の神経活動が活性化する様子が観察されたという。ボン大学の神経科学者、ブレンド・ウェーバー博士は、「腹内側前頭葉皮質(vmPFC)が活性化すればするほどWTPは高くなる」としている。
また、その後はフェアトレード表示が味覚に与える影響に関する実験も行われた。被験者らに対し、実際には全く同じ2つのチョコレートを一方はフェアトレード製品、もう一方は一般の製品だと伝えたうえで両者の味の評価を求めたところ、被験者らはフェアトレードと伝えられた製品に対してより高い評価を与えたという。
これらの研究結果により、フェアトレードラベルは消費者の神経系メカニズムに反応を及ぼし、食品の購入意思や評価に影響を与えている可能性が示された。現在世界ではフェアトレード認証製品に対する需要が着実に増加しているが(参考記事:【アメリカ】高まるフェアトレード製品への需要、輸入26%増)、今回の研究結果は、フェアトレード認証は取引を通じた農家や地域社会などへの還元に加えて、企業のマーケティングという観点からも有効であることを示している。
【参照リリース】Effects of social sustainability signals on neural valuation signals and taste-experience of food products
【参考サイト】Frontiers
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