環境関連ニュースサイトを運営しているNPO、Mongabayの報道によると、インドネシアの森林大臣を務めるSiti Nurbaya氏は12月下旬、同国にて製紙パルプ用のプランテーションを営む企業ら23社が大規模火災およびそれに伴うヘイズ(煙害)を発生させたとして処罰を受けたと発表した。既に3社が操業許可を剥奪され閉鎖に追い込まれているほか、16社が操業停止、4社が保護観察処分状態となっており、さらに33社が捜査中だという。
インドネシア政府が公表しているのは企業のイニシャルのみだが、シンガポールのザ・ストレーツ・タイムズ紙は、閉鎖を余儀なくされているのは、アジア・パルプ・アンド・ペーパー(APP)のサプライヤーであるMega Alam Sentosa、Bumi Mekar Hijau(BMH)、 そしてSebangun Bumi Andalas Wood Industry(SWI)の3社だと社名を明らかにしている。BMHとSWIはいずれも火災とヘイズが最も激しい地域、南スマトラで操業している企業だ。
WWF(世界自然保護基金)インドネシアによると、この地域ではプランテーションの開発に際し安価にできる野焼きが違法に行なわれており、これが特に泥炭地において大規模かつ長期化する火災の原因となっている。泥炭地は湿地帯であり自然状態では火災は発生しにくいものの、地中に炭素を多く含んでいるため、開発用に廃水設備を整えるなど人工的に乾燥させている地域では非常に燃えやすくなる。この点から、野焼きは意図的に火災を引き起こしているとも見られる極めて危険な行為だ。
2015年は特にエルニーニョ現象の影響で雨季の始まりが遅くなり、火災の発生や延焼が長期にわたって続いている。11月時点で火災は12万件以上発生し、17億5千万トンのCO2が大気中に排出されており、この量は日本やドイツの年間排出量を上回ると報じられている。
英紙ガーディアンは、同国の火災は2015年7月以来で、カリマンタン(ボルネオ島インドネシア領)とスマトラで、2015年はエルニーニョにより乾季が長期化し、延焼に拡大につながったと報じている。スマトラでの火災の37%は紙パルプ土地使用権内で発生しているが、パーム油製造業者の関わりも大きいという。ヘイズはインドネシアからマレーシア、シンガポール、そしてタイ南部にまで広がっており、人的被害として(国や地域は特定していないが)19人が死亡し、50万件以上の上気道感染症が確認されている。同紙は今回の大火が「ヒューマニティに対する犯罪」と呼ばれていると記述している。
経済への影響としては、インドネシア政府は同国で470億米ドルの被害があったと試算、また世界銀行はシンガポールでは160億米ドルの損失と見積っている。両国だけでも合わせて630億米ドルの損失ということになる。シンガポール政府は関連企業に対して行動を起こすと発言し、損害賠償請求を示唆している。
責任の所在はどこにあるのか。ガーディアンおよびInvestAsianは、WWFインドネシアによる「集団的怠慢(collective negligence)」に起因するという説を引用している。開発と拡大を優先する企業、少しでも自分たちの所有地を拡大したい地元農家、そして抜本的な対策を遅らせている政府、この三者が責任を負うべきだという。
しかし、WWFインドネシアの副代表を務めるIrwan Gunawan氏は、インドネシア政府の対策は強い影響力に欠けており、「再発防止の効果的な方法が見い出せていない」と述べている。
【参照リリース】50 + companies being investigated or punished for Indonesia’s haze crisis
【参照記事】Indonesia haze sends a clear message on climate
【参照記事】Indonesia's forest fires: everything you need to know The Guardian, Nov.11, 2015
【参照記事】Haze Chokes Indonesia Business and Economy InvestAsian Nov.21, 2015
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