個人同士が部屋の貸し借りを行うAirbnb(エアービーアンドビー)と並んでシェアリング・エコノミーの代表格となるサービスとして有名な配車アプリのUber(ウーバー)が、自家用車のシェアライドによるCO2の削減だけではなく、意外な社会的効用をもたらしているようだ。
米国テンプル大学フォックスビジネススクールのBrad N. Greenwood准教授とSunil Wattalj准教授は、昨年Social Science Research Networkに掲載された論文の中で、Uberによるカーシェアリングと飲酒運転の減少率との関係性について論じている。2人の研究者はカリフォルニア・ハイウェイ・パトロールのシステムから入手したデータを使用して、両者の関係性の確認だけでなく、どのようなメカニズムによってこの効果が発生していたかを調査した。
Uberは通常のカーシェアリングとは異なり、一つの車を複数人で共有するのではなくユーザーの相乗りを仲介する「シェアライド」サービスだ。ドライバーは自家用車に一般客を乗せることができ、タクシー運転手のように収入を稼ぐことができる。客は自ら運転をせずに、タクシーを利用する感覚でドライバーの自家用車で移動ができるという仕組みとなっている。
調査の結果、米カリフォルニア州では2009年から2014年の間に、比較的費用が安いUber Xが交通市場に登場して以降、飲酒運転による死亡率が大幅に減少していたことが分かった。同様の傾向はカリフォルニア州以外の都市でも見られたことから、Greenwood氏らは飲酒運転による死亡率の減少はUberの存在によるものだと結論づけた。
しかし、費用がUberXより高いUber Blackについては限定的な関係性しか見られなかったという。なお、両氏は今回の調査結果からUberXの積極的な利用により年間約500人の命が救われ、納税者の経済的負担が13億米ドル軽くなると試算している。
また、両氏はUberのスマートフォンアプリは、飲酒した人々が使いやすく費用も手頃な選択肢であり、そのことがアルコール関連の死亡の減少へと繋がったと論じている。しかし、この関係性はUberや類似サービスへの需要が高く、料金も高い休日や週末には平日ほどの強さが見られなかったことから、特にコスト面がサービス利用の決定要因になったと推察されるとのことだ。
今回の結論を踏まえ、両氏はUberやLyftといったシェアリング・プラットフォームが我々の日常生活に変化をもたらしていることを認識したうえで、今後は飲酒運転の防止や削減といった公共の利益をもたらす政策を決定するための確実なデータが求められるとしている。
米国運輸省が公表している2010年のデータによると、米国の高速道路では2時間ごとに3人が飲酒関連の自動車事故で死亡しており、1日平均30人以上、年間13,365人の死者と370億米ドルの経済的損失が出ているとのことだ。
既存の法規制だけにとどまらず、新たに広まりつつあるUberやカーシェアリングなどのサービスや仕組みを活用することで、いかに飲酒運転事故やそれに伴う経済損失を削減することができるのか、その効果や方法についても更なる研究の余地がありそうだ。
【参照リリース】New Study Links Uber to Decrease in Drunk Driving Death
【参考サイト】Show Me The Way To Go Home: An Empirical Investigation of Ride Sharing and Alcohol Related Motor Vehicle Homicide Brad N Greenwood Sunil Wattal Fox School of Business Temple University
Social Science Research Network, January 29, 2015
【参考サイト】Drunk Driving by the Numbers United States Department of Transportation
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