英紙ガーディアン等の報道によると、ロンドンの地下鉄駅の内、ウォータールー、キングスクロス、ロンドンブリッジ等、57駅は洪水の危険性が極めて高いことがわかった。
報道の基となった報告書は、2012年にアメリカを襲った巨大ハリケーン「サンディ」がニューヨークの地下鉄に大きな被害をもたらしたことを受け、調査されたもの。内容は未発表のものだという。同報告書では、気候変動による荒天・嵐が以前より頻発しており、今後の激化が予測されること、ロンドンの地下鉄が洪水の被害を受けるのは「時間の問題」だと記述されていることを受け、各紙は重大な問題と報じている。洪水の原因としては大雨の他、水道管の破裂やアスファルトの多用も指摘されている。
ロンドン交通局が管理・運営する地下鉄駅は270駅あり、毎日350万人以上が利用している。報告書の中で、危険度が「極めて高い」とされた場所は85カ所。その内、57か所は駅であり、28か所はエスカレーター等のシャフトと地下への入り口だという。また危険性が「かなり高い」とされる場所も68カ所あり、その内23が駅だ。最も危険な地下鉄駅は上記の3駅の他、フィンツべリー・パーク、ノッティングヒル・ゲイト、セブンシスターズ、コリアーズ ・ウッド、ストックウェル、マーブルアーチが挙げられている。またそれらのハイリスクな駅が存在する路線としては、多い順に、ノーザン、セントラル、ピカデリー、ジュビリー、ビクトリア、サークル、ベイカールー、ディストリクト、ハマースミス&シティー、メトロポリタンとなっている。通勤客だけでなく多くの観光客にも影響が出る。
洪水の発生は乗客の生命を危険にさらすだけでなく、被害箇所の修復のための閉鎖や電車の遅れ等、経済的にも多大な損失が予測される。昨年6月の大雨の際には洪水のためステップニー・グリーン駅、エンバンクメント駅等のホームが冠水して一時閉鎖となり、ハマースミス&シティ線、サークル線で運休や大幅な遅延が生じた。
ロンドン地下鉄はロンドン市に対し、最も危険な場所および防災設備についての詳細な調査を行う費用として、今後3年間で300万ポンドを要請している。ロンドン市は2011年に市長名で「ロンドン市の気候変動対策」を発表した際、市が管轄する交通システムで洪水に対して最も脆弱なのが地下鉄だと指摘したが、リスク回避の対策はほとんど進んでいない。現在はメトロポリタン線で工事が行われており、随時、他の線でも排水工事等を進める予定だとしているが、本格的な防災対策にまでは発展しない見込みだ。
地下鉄の予算を管轄するロンドン市交通局は、調査の必要性を認識しつつも、今年5月の選挙で決まる市長の決断次第だとしている。市長は交通局理事会のメンバーと議長を任命する権限を持ち、現在は自らが議長職も兼任していることから、今後の展開が注目される。今回メディアに公表された内容は、英国の政策が気候変動に対して不十分であることも指摘しているという。そのため、地下鉄だけでなく、M25(ロンドン周辺の環状高速道路)やイミンガムのコンテナ港、配電網等にも大きな影響を及ぼすことが懸念されている。
【参照記事】57 tube stations at high risk of flooding, says London Underground report
【参照記事】London Underground finds 57 tube stations are at 'high risk' of flooding
Sustainable Japanの特長
Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。
- 時価総額上位100社の96%が登録済
- 業界第一人者が編集長
- 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
- 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく ログインする※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら