サステナビリティ報告に関する国際ガイドラインのGRIは12月7日、2017年から2019年にかけて優先度高く実施していく取組を公表した。この取組は「GSSMワークプログラム」と名付けられており、GRI内の基準設定機関GSSB(Global Sustainability Standards Board)が11月23日に開いた理事会でも承認された。
GSSMワークプログラムで定めらた注力分野は全部で10。
- GRIスタンダードの導入支援
- GRIスタンダード内容の改訂(定期的作業)
- GRIスタンダードの特定基準の開発(定期的作業)
- 業種特有の内容の開発
- GRIスタンダードの公式解釈文書やガイダンスの発行
- 報告の質を向上するため他のイニシアチブやプロジェクトへ参加
- 特別な報告者向けの新たなガイダンスの開発
- 報告作業の負荷削減とGRIスタンダードの理解向上のため主要パートナーと協働
- 専門知識向上のためのプログラム、ツール、サービスの提供
- GRIスタンダードの実施状況と新たな報告事例のモニタリング
GRIスタンダードの改訂作業では、すでに「GRI303:水」と「GRI403:労働安全衛生」が予定されている。改訂作業は規定により15ヶ月から18ヶ月がかかる見通しで、改訂の検討範囲が拡大するとそれ以上かかることもあるという。今年の年末中に双方の改訂プロジェクトが発足する。「GRI303:水」の改訂では、場合により関連度の高い「GRI306:排水および廃棄物」も改訂の対象に含まれる場合もある。レビュー実施のためのスケジュールとしては、来年1月に実施チームメンバー選考を開始、2月末にインタビューの実施、4月にチーム組成の完了と具体的な改訂作業の開始を見込んでいる。そして9月までに改訂案の初回発表が予定されている。
また2017年後半には、「GRI201:経済的パフォーマンス」、「GRI306:排水および廃棄物」と、複数分野にまたがる人権基準の3領域で改訂作業がスタートする。「GRI201:経済的パフォーマンス」では税や政府への支払いに関する内容の追加が主な検討内容となる。「GRI306:排水および廃棄物」では、先行して着手される「GRI303:水」の中で「排水」に関する項目も扱う予定のため、こちらの改訂では主に廃棄物が対象となる。人権基準の見直しについては、「GRI408:児童労働」「GRI409:強制労働」「GRI412:人権評価」などが主な対象となることが想定されており、場合によっては人権に関する基準体系が再編される可能性についても言及されている。
またGSSBは、金融安定理事会(FSB)の気候変動関連の財務情報開示に関するタスクフォース(TCFD)が検討している情報開示ルールの動向を注視しており、その内容に応じて「GRI302:エネルギー」「GRI305:大気への排出」など関連基準への影響を見極めていく。
このようにGRIは今後も次々と基準を改訂していく。サステナビリティレポートやCSRレポートを作成する企業は今後、GRIスタンダードが改訂されるのを待ってから対応作業を開始するのでは作業が追いつかなくなる。そのため、企業経営者には、世界的な事象を日々情報収集しながら状況を先読みし、必要となる取組を自信をもって先んじて始めることが求められていく。サステナビリティ分野で評価の高いグローバル先進企業は、GRIスタンダードの枠を超えた活動を矢継ぎ早に実施しており、GRIスタンダードの改訂に慌てる様子は伺えない。むしろGRIスタンダードの改訂のイニシアチブを取っているところも少なくない。
経済を取り巻く世界の環境は目まぐるしく変化している。毎日世界各国や自然環境が大きく変化しているため、その社会や環境に向き合う企業部門にはそれに応じたスピードが要求されていく。ITの領域ではとてつもない変化スピードから「ドッグイヤー」という言葉が数年前から言われているが、サステナビリティ部門にも「ドッグイヤー」並み、もしくはそれ以上の変化が必要となっていく。
【参照ページ】GSSB sets sights on Standard development in 2017
【取組内容】GSSB Work Program 2017-2019
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