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【アメリカ】農務省、動物福祉のため有機畜産鶏の飼育方法規制を強化。全米有機プログラムを改正 2017/02/08 最新ニュース

 米農務省(USDA)農業市場局(AMS)は1月19日、有機畜産の家畜、家禽の取り扱いや輸送に関する行政規則の改正を発表した。オバマ前大統領退任の2日前に公布された改正で、主眼となっているのは鶏(ニワトリ)の飼育環境についてだ。

 一般的に「有機畜産」手法で飼育された鶏は屋外で新鮮な空気を吸い、太陽の光を直接浴び、草地を自由に歩き回っているイメージがある。しかしTriple Punditによると、これまでの規制下では、有機畜産に関して飼育方法の規制はなく、現状では有機畜産でない鶏の飼育方法とほぼ同様。鶏は、羽を伸ばせないほど狭い高密度の養鶏場に閉じ込められており、さらに養鶏場は、換気が不十分で1日中陽が当らない環境で飼育されているという。

 今回の規則改正では、保健福祉省監察総監室と全米有機認証基準委員会からの勧告や助言を受け、1990年に制定された「有機食品生産法(Organic Foods Production Act)」に基づき、連邦行政規則である現行の米国農務省全米有機プログラム(NOP)を強化した。これにより、有機畜産の家畜と家禽類の取扱基準を一体として運営できる仕組みとした。今回の規則改正での変更点は主に6つ。

  1. 家畜や家禽類の動物福祉を確保するため、全米有機プログラムに参加する生産者および取扱者の動物の扱い方を明確化
  2. 家畜や家禽のストレスを最小限にするため、肉体的操作を行う時と方法を明確化。加えて一部の肉体的操作は禁止
  3. 種や成長過程に応じ、有機畜産の鶏の室内と戸外の上限飼育密度を設定
  4. 戸外スペースを特定し、有機家禽類に土壌や植生を含む戸外スペースへのアクセス室内環境確保を義務化
  5. 有機畜産の家畜や家禽類を販売や屠殺のために輸送する際の必須要件を追加
  6. 農務省食品安全検査局(FSIS)が、有機畜産の家畜や家禽類の屠殺に関する必須要件を明確化
  7. 今回は室内飼育スペースの確保について鶏だけを対象としたが、今後は他の鳥類に拡大する可能性を明記

 今回制定された新規則は、2017年3月20日に施行されるが、規則遵守の完了期限は内容毎に設定されている。戸外スペース確保規定については、2020年3月20日以前に有機認証を取得した事業者は2022年3月21日までに対応を完了しなければならない。それ以降の有機認証取得については、認証取得時に戸外スペース確保要件を満たさなければならない。また、室内スペース要件については2020年3月20日までに対応しなければならない。その他の規定については、2018年3月20日が対応完了期限。

 今回の規則改正の背景には、動物福祉団体や消費者団体から、有機認証済みの鶏肉や卵に関する規制強化を要請する長期間の働きかけがあったという。このような動物福祉を求める運動の目的には、動物愛護だけでなく、過密状態で家畜が飼育されることから発生する感染症の蔓延防止などもある。従来の規制の下では殺虫剤等に関する条項はあったものの、動物の適切な飼育方法に関してはほとんど触れられていなかった。米国動物虐待防止協会(ASPCA)は、農務省が当初から家禽類の日常的な行動、快適さを求める行動、ストレス軽減等についての配慮が足りず、有機の主旨に沿い、消費者の動物福祉に関する期待に応える規制を制定をしてこなかったと批判している。

 2010年に農務省が発令した規則により、牛、羊、山羊等の有機畜産反芻動物は、年間120日以上、牧草地に放牧し生草を与える事が定められているが、鶏は除外されていた。今回の規則改正により、有機認証を付与される鶏は、室内で一定のスペースが確保されて羽根を伸ばすことができるようになり、太陽の下で地面を自由に歩き回ることができ、鶏同士の突き合い等を防ぐためと実施されてきた嘴の先端の切り落としも禁止される。

 近年、有機食品の消費者ニーズは増加しており、2015年には売上げが約400億米ドル、前年比11%上昇しているという。大規模農場の中には有機部門を独立させ、ブランド化しているところもあり、競争が激化している。改正に伴う費用負担について、小規模農場では飼育環境が有機認証に適した所が多いが、大規模農場では多額の設備投資や利益の減少が予測されている。

 今回の規則改正もオバマ政権の任期満了直前のタイミングで駆け込み制定されており、トランプ政権の中で規制が再度緩和されるなどの可能性も否定できない。しかし、このような動物福祉を求める声は、欧米の消費者や投資家の間では高まりを見せている。

【参考ページ】USDA Tightens Animal Welfare Rules for Organic Farms
【参考ページ】ASPCA Commends USDA for Improving Lives of Animals Raised on Organic Farms
【行政規則改正】National Organic Program (NOP); Organic Livestock and Poultry Practices
【参照ページ】監察総監室(Office of Inspector General, OIG)制度について(厚生労働省)
【参照ページ】産業動物の福祉について(環境省)
【参照ページ】食品安全関係情報詳細(内閣府)

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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