【カナダ】オピオイド関連死が増加。政府は警告ステッカーの貼付を義務付け 2018/05/13 最新ニュース

 カナダは前例のないオピオイド危機に見舞われている。同国政府が公表したデータによると、2016年に「明らかなオピオイド関連死」として報告された事案が全国で2,946件発生した。内訳は、偶発的(非意図的)な死が2,593件(88.0%)、自殺が250件(8.5%)、不明が103件(3.5%)。中でも偶発的な死が966件(100,000人当たりの年間死亡率20.3)発生したブリティッシュ・コロンビア州では同年に「公衆衛生非常事態」を宣言している。

 この状況はさらに悪化し、2017年1月から9月の間には、「明らかなオピオイド関連死」は全国で2,923件発生し、その内、偶発的な死が2,694件(92.2%)、自殺が126件(4.3%)、不明が103件(3.5%)となっている。ブリティシュ・コロンビア州ではこの間に偶発的な死が1,076件発生しており(100,000人当たりの推定年間死亡率29.8)、脅威的だ。
 
 注目されるのは、2017年1月から9月に発生した偶発的死の内、72%が「フェンタニル」の服用によるもので、2016年の55%と比較すると大幅に増加している。フェンタニルは、モルヒネやヘロインより遥かに強力で、麻酔や鎮痛等に使われる合成オピオイドだ。人口約3,515万人で、ロシアに次いで世界第2位の面積をもつカナダは、オピオイド関連死に関しても地域によるバラツキが大きいが、全体としては、2016年と2017年1月から9月の偶発的な死亡者の76%は男性で、最も死亡率の高い年齢層は30~39歳だという。

 これを受けてカナダ保健省は、2018年10月から薬局や病院・診療所で処方されるすべてのオピオイド系医薬品に依存症、中毒、過剰摂取に関する警告ステッカーの貼付と、過剰服用の際の症状や副作用の可能性等に関するハンドアウト(プリント)を患者に配布することを関係機関に義務づけると5月2日に決定した。連邦政府によるこのような規制は、2014年に制定された「ヴァネッサ法」が基盤となっている。

 ヴァネッサ法とは、2000年に当時15歳だったヴァネッサ・ヤングさんが胃腸疾患の処方薬を服用した後に死亡した事件を機に制定された。後にこの薬は安全でないことが解り市場から排除されたが、ヴァネッサさんの父親でオンタリオ州オークビル出身の保守党の国会議員だったテレンス・ヤング氏が、同国における医薬品の安全性を確保するためのモニタリング・システムを、より厳格なものにすべきとして働きかけを行い、実を結んだものだ

 同法の下では、(1)医薬品による重篤な副作用および医療機器事故に関する特定の医療機関による報告義務、(2)関連機関や企業に対する情報提供の要請、新たな試験・研究の要望やモニタリング、製品評価の指示等の権限を保健大臣に付与、(3)医療関連製品の安全に関する機密情報を必要に応じて開示する権限を保健大臣に付与、(4)医薬品および医療機器のラベルやパッケージを修正または交換するよう企業に要請する権限を保健大臣に付与、(5)安全でない医療関連製品を市場から排除する権限を保健大臣に付与等の項目が含まれている。全体的に保健大臣の権限を強化し、違反者に対しては厳罰を科する方策により、医薬品や医療機器の安全性を確保する内容となっている。

 今回決定された警告ステッカーの貼付とハンドアウトの配布は、ヴァネッサ法の下で実施する初のケースだという。カナダ健康保健省のチーフ・メディカル・アドバイザーであるスプリヤ・シャーマ博士は、「オピオイド危機の多くは、違法に入手された薬物に起因しているが、処方医薬品によるオピオイドもこの問題に関与している」と語っている。そして最も重要なことは、カナダ中で副作用や危険性に関する一貫した情報を共有することだと指摘する。

 さらに同氏は、カナダでのオピオイド系医薬品はリスクマネージメント・プランが欠如したまま承認されたものであり、今回の決定を機に、関連製造業者は製品が市場に出回ってからの有害事象をモニターする方法や、医療関係者がトレーニングを通して、医薬品を使用する患者のリスクを最小限にする方法等を含むリスクマネージメント・プランを作成し、保健省に提出するよう求めると述べている。

 このような政府の方針に対し、カナダ薬局協会は疑問を呈している。同協会のフィル・エムバーリー専門事務担当マネジャ-は、薬局や薬剤師側では、患者1人11のニーズや個別の対応を重視しており、患者全体を同種のグループとして扱うことには懐疑的であるとコメント。また同じオピオイド系でも、メサドンやサボキソンのような、フェンタルほど強力でない医薬品を使用する患者にとっては、警告ステッカー等は不適切だと指摘する。

 医薬品の有効性と患者の安全性の確保、そして医療専門家の関与と企業の責任範囲等を含む重要な課題に、政府の早急な取り組みが求められている。

【参照ページ】Health Canada mandates warning sticker on all prescription opioids 
【参照ページ】National report: Apparent opioid-related deaths in Canada (released March 2018)
【参照ページ】Overview of Vanessa’s Law
【参照ページ】Vanessa’s Law to protect Canadian from unsafe drugs
【参照ページ】カナダ 一般事情:外務省

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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