欧州委員会のサステナブルファイナンスに関するテクニカル専門家グループ(TEG)は1月10日、気候変動関連情報に関する企業の情報開示について初の答申をまとめた。欧州委員会に対し、EU非財務情報開示指令(NFRD)に即して作成されたガイドラインを改正し、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言内容や、現在別途欧州委員会で検討中の「サステナブル」定義に基づく内容を導入するよう提言した。
【参考】【EU】欧州委、サステナブルファイナンス・アクションプラン発表。金融・企業報告のEU法改正も視野(2018年3月12日)
【参考】【EU】欧州委員会、サステナブルファイナンスの「サステナブル」定義案発表。フィードバック募集(2018年12月10日)
【参考】【EU】欧州連合理事会、大企業の透明性向上に向け、非財務情報開示義務指令を承認(2014年10月5日)
今回のTEGの答申書は、気候変動関連情報の報告義務を負うべき企業について、NFRDと同様、従業員500名以上のEU企業としつつ、投資業務や運用業務を行う銀行や保険会社にも適用されるべきとした。EUの試算によると、7,600社が対象となる見込み。企業報告の読者については、幅広いステークホルダーを念頭に置きつつも、投資家、債権者、保険引受会社等をメインに据えた。
今回の答申書が言及したガイドラインは、欧州委員会が2017年6月に策定した「非財務情報開示ガイドライン」のこと。同ガイドラインは、遵守義務はないが、NFRD義務を負う企業向けに参考資料としてまとめられた。それには、考慮すべき国際ガイドラインとして、国連グローバル・コンパクト(UNGC)、CDP、国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)、ISO26000、SASB、<IR>、GRI、自然資本プロトコル(NCP)、CDSB、OECD紛争地域および高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのデュー・ディリジェンス・ガイダンス等を紹介し、KPIとして設定すべき指標等にも触れている。
今回の改正提言では、TCFDガイドラインの内容を反映させるため、企業が開示すべき内容として、「ビジネスモデル」「ポリシーとデューデリジェンス・プロセス」「アウトカム」「主要リスクとマネジメント」「KPI」の5つを設定。各々について、「開示すべき内容(タイプ1)」「開示を検討すべき(タイプ2)」「開示を検討してもよい(タイプ3)」の3つのレベルで、具体的内容を紹介した。例えば、タイプ1に位置づけられたKPIは、全セクターではスコープ1、2、3の二酸化炭素排出量、二酸化炭素排出量削減目標の2つを置いたことに加え、個別のセクター毎にもタイプ1のKPIを定めた。金融機関のカーボンフットプリント測定は、タイプ2とした。
TEGは、2月1日まで今回の答申書に対するパブリックコメントを受け付け、その内容を別途欧州委員会に提出する。その後欧州委員会は、同ガイドラインの改正作業に入る。
【参照ページ】Sustainable Finance: Commission expert group issues first report on disclosure of climate-related information
【参照ページ】Technical Expert Group on Sustainable Finance: report on climate-related disclosures
【答申書】Report on Climate-related Disclosures
【ガイドライン】Communication from the Commission — Guidelines on non-financial reporting
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