環境情報開示を推進する国際NGOのCDPは7月31日、製鉄世界大手20社の気候変動対応状況ランキングを発表した。首位は、スウェーデンのSSAB。日本勢は、製鉄世界大手や韓国勢に負ける結果となり振るわなかった。
鉄鋼業界は、二酸化炭素排出量が非常に多い業種。世界の排出量の9%を占める。鉄は世界の金属生産の90%以上を占め、最もリサイクルが進んでいる素材でもある。パリ協定に基づく2℃目標達成のためには、製鉄業界は2050年までに二酸化炭素排出量を65%削減する必要がある。しかし、今回の分析では、企業の目標を積み上げても2050年までに50%未満しか削減できない。但し、製鉄の省エネはほぼ限界までやりきっており、さらなる削減には業界をあげた大幅な変革が求められる。
また製鉄業界の二酸化炭素排出量のうち86%は、すでに二酸化炭素排出量取引制度(ETS)等のカーボンプライシング制度に入っている、もしくは入る予定となっており、2040年までに炭素価格が1t当たり100米ドルに上がる砂リオでは、20社の収益が平均14%損なわれると分析した。
首位SSABは、化石燃料を一切用いない製鉄の実証プロジェクト「HYBRIT Pilot Plant」を2018年に開始。スウェーデン北部のルーレオーで製鉄所建設をすでに着工しており、2020年に完成する予定。2位のアルセロール・ミタルは、電解採取による二酸化炭素排出フリーの鋼生産「SIDERWIN」や、排気ガスから二酸化炭素を抽出する炭素回収・利用・貯蔵(CCUS)「Carbon2value」等の解説に勤しんでいる。また、3位韓国の現代製鉄は2050年までに二酸化炭素排出量を80%削減する目標を掲げている。
(出所)CDP
日本勢は、日本製鉄が7位、JFEホールディングスは6位。タタ・スチールの4位、POSCO(ポスコ)の5位にも及ぼなかった。日本勢は、「移行リスク」と「気候変動ガバナンス&戦略」の分野が足を引っ張っている。米国企業や中国企業は非常にスコアが低かった。
同レポートは、製鉄プロセスに使われている水についてもリスクを分析。20社の水消費量のうち50%が水ストレス・リスクが高く、旱魃等の異常気象や、真水供給減少リスクにさらされていることも伝えた。
【レポート】Melting Point
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