国際人権NGOアムネスティ・インターナショナルは9月19日、FIFAワールドカップ2022年の開催国国カタールで、建設・清掃を受託する企業3社で雇用されていた移民労働者数百人が給料未払いのまま帰国したとする調査レポートを発表した。カタールでは、ワールドカップ施設建設で人権侵害が数多く指摘されてきており、カタール政府も労働改革に乗り出すと約束していたが、アムネスティ・インターナショナルは、実際には改善していないと批判した。
アムネスティ・インターナショナルは、2018年3月以降、Hamton International、Hamad bin Khaled bin Hamad(HKH)、United Cleaningの3社の追跡調査を開始。同3社は、ワールドカップ施設建設のための建設や清掃の業務を受託。合計従業員2,000人以降が雇用されていたが、資金難を理由に数カ月間給与支払いを停止。最終的に操業停止に至り、労働契約も解除された。
カタール政府は、国際労働機関(ILO)とパートナーシップを結び、労働改革の一環として、2018年3月に労働争議調停委員会を発足。アムネスティ・インターナショナルの調査では労働者1,620人が訴えを起こしたというが、米国務省によると、訴えの数は6,000以上にもなるという。カタール法では、同委員会は訴えから6週間以内に判断を下すことになっていたが、3ヶ月から8ヶ月も待たされたケースもあった。その間、給与が停止されているため、所得がなくなり、食糧や水が不十分な中、労働キャンプでの生活を余儀なくされていた。
また、労働争議調停委員会での勝利を勝ち取っても、未払給与の補償までは調停されないことも判明。補償を得るためには、さらに民事裁判をしなければいけない事態となった。それにより、労働者側の貯金はさらに枯渇し、困窮を迫られていたという。
最終的に多くの労働者は、労働争議調停委員会での訴えを取り下げる代わりに、雇用者側から課されていた債務を帳消しにする判断を半ば強制され、帰国することとなった。労働争議調停委員会の判断で企業側から補償を得られた人はゼロだったという。
カタール行政開発・労働・社会問題省は、アムネスティ・インターナショナルに対し、労働争議の調停に尽力し、労働キャンプに対しても食糧提供等を実施してきたと回答した。アムネスティ・インターナショナルは、カタールには約200万人の移民労働者がおり、国際的な労働基準を満たしていないと改善を要求している。特に、雇用主が労働者を5年間から7年間拘束することができ、カタール人労働者等に対し出国の際には雇用主の許可を必要とする労働制度「カファラ制度」の撤廃を求めていく。
【参照ページ】Qatar: Despite reform promises, migrant workers still return home without wages or justice
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