世界経済フォーラム(WEF)は1月16日、日本の地方における公共交通機関の持続可能性を分析した研究成果を発表した。多くの地方自治体で公共交通機関の維持に苦しんでおり、もしこのまま交通網が衰退していけば、地域社会に与える深刻な悪影響を与えると警鐘を鳴らした。
今回の研究では、広島県の23つの地方自治体の鉄道、バス、タクシーを対象に分析を行った。5つの経済・人口動態指標を基に、独自指標「Rural Public Transport Sustainability Index」を開発。地方自治体の交通機関が抱える問題を可視化した。また、地方の特殊事情に沿った解決策の提案を容易にするために、地域の類型化も行った。
その結果、30%の自治体が公共交通機関の持続可能性「低」、43%が「中」、26%が「高」と評価された。公共交通機関の維持費が自治体の財政を圧迫しており、数百円の運賃に対して自治体が3,000円の補助金で維持をしている交通機関のケースもあった。中国地方の鉄道の60%は、収入がコストの50%もカバーできていない。また、情報不足も深刻で、自治体の5分の1が交通機関の利用者数などの正確なデータを持っていないとした。個別バス停の乗降客数データを保持している自治体は23のうち1つしかなかった。
公共交通機関の衰退が地域社会に与える影響についても言及。人口減少と高齢化が進んでいる地方において、公共交通機関の衰退によって高齢者の通院ハードルが上がり、健康リスクに直結するとした。また、自家用車の運転率も上がって交通事故リスクも増加する。さらに、地域経済への影響も大きいと警告。不便を感じた住民が都市へと移住してしまうことで、益々交通機関の維持が困難になる上地域経済も衰退し、さらなる移住を引き起こすという負のスパイラルに陥る。
こうした問題に今すぐ対処する必要があるとした上で、解決策の道筋も示した。問題の根本的な解決には、地域特有の交通インフラ事情や問題を考慮に入れるべきとしつつ、「DRIVER」という6つの要素が解決の鍵としてあげた。DRIVERはそれぞれ、ダイナミックルーティング(Dynamic route)、住民参加型(Resident-involved)、インターモーダル(Intermodal)、多目的(Versatile)、効率的(Efficient)、適切な規模(Right-sized)、を表す。
交通網の衰退の問題は将来、日本以外の世界各国にも生じうる問題であり、WEFは今後も継続的に地方の交通機関に関する問題の研究を行うとした。
【参照ページ】Japan’s Elderly under Threat as Rural Public Transport Networks Suffer Sustainability Problems
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