世界資源研究所(WRI)は2月5日、海面上昇に対する空港の水没リスクを分析した結果を公表した。同分析には、パートナー30団体等の支援を受け開発した「Resource Watch」のベータ版を活用。今世紀末までに1m海面上昇した場合、現状多くの空港が海面上昇に対して脆弱であり、空港80ヶ所が水没する危険性があるとした。
今回のシミュレーションでは、海面上昇データはClimate Central、空港の位置情報はOpenFlightsの提供データを参照。今世紀末までの海面上昇水位の数値は、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)予測の50cmと1mを利用した。国連は、このままの水準で二酸化炭素排出を続けた場合、今世紀末までに1m、対策を講じ、気温上昇を2℃以内に抑えたとしても、50cmの海面上昇が生じるとしている。学術誌Natureへの投稿論文の中には、今世紀末までに2mの海面上昇を予測する論文もあり、今回の分析結果よりもさらに多くの空港に影響が及ぶ可能性もある。
今回の分析結果、50cmの海面上昇では空港44ヶ所、1mでは80ヶ所が水没する危険性があるとした。背景には、空港の適地には、長距離滑走路を確保するために低標高の平地が多いことがある。同地域は、海面上昇や嵐による大波に対し脆弱でもある。特に大きな影響を受ける地域は、空港の数が多い北米・欧州・アジアだと分析した。
北米では50cmの海面上昇でフロリダ・キーウェスト国際空港等6ヶ所が水没し、1m上昇する場合、12ヶ所が水没するとした。欧州では50cmの海面上昇でアムステルダム・スキポール空港やデンマーク・カロンボー空港等を含む11ヶ所、1mで23ヶ所の水没が懸念される。アジアでは、50cmの海面上昇で中国・塩城空港やカスピ海沿岸のイラン・ラムサール国際空港等を含む7ヶ所、1mで14ヶ所の空港が水没すると結論づけた。日本でも、東京国際空港(羽田空港)等が水没表示にエリアに属している。
同分析は、海面上昇と標高の関係のみに基づいているため、例えば、オランダの某髄防止堤や水流管理技術等は考慮されていない。しかし、今回指摘のあった空港80箇所以外にも、海面上昇だけでなく気温上昇への脆弱性の高い地域が顕在化しており、気候変動の影響には懸念が付きまとう。
被害を受けた際の影響は大きく、例えば米ニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港は2012年、ハリケーン・サンディによりフライト1万便がキャンセルとなり、数百万ドル規模の経済損失を被った。関西国際空港は2018年9月、台風により連絡橋が破壊され陸の孤島と化した。その他にも、気温上昇で空気密度が小さくなることで、航空機が得る揚力が小さくなり、離陸に必要な滑走距離が伸び、フライトがキャンセルとなる事態も発生している。また、猛暑により飛行中の擾乱が大きくなることも危惧されている。
各空港は、対応に着手し始めており、シンガポール・チャンギ国際空港では滑走路の排水システムを刷新するために再舗装を、ボストン・ローガン空港やサンフランシスコ国際空港は新たな堤防の建造に取り組んでいるとした。
【参照ページ】Runways Underwater: Maps Show Where Rising Seas Threaten 80 Airports Around the World
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