人権NGOは4月30日、外国勢力による占領地域で事業実施する企業に対し、人権デューデリジェンスの強化と国際法に基づくリスクマネジメントを求めるガイダンスを発表した。ネスレ、シーメンス等の例を踏まえ、国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)に基づくアクションを整理。国連のビジネスと人権に関するワーキンググループに提出した。
今回のガイダンスは、パレスチナの人権団体アル・ハクと英人権・環境NGOグローバル・リーガル・アクション・ネットワーク(GLAN)が共同発表した「占領地域におけるビジネスと人権:人権保護ガイダンス」。両NGOは、紛争地域における人権デューデリジェンスのガイダンスは、既に存在しているものの、実際の取り組みでは一貫性がないことを問題視している。
そこで今回、国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)に基づいたガイダンスを発表。ケーススタディに、ロシア併合後のクリミア、モロッコ支配下の西サハラ、イスラエル占領下のパレスチナ地域(OPT)を選び、ネスレ、シーメンス、ブッキング・ドットコム、ハイデルベルグ・セメント等が実際に直面した課題やリスクなどを交えて説明した。
同ガイダンスは、「被占領国政府に対する行動指針」と「企業に対する行動指針」の2つで構成。まず被占領国政府に対する行動指針は、前提として、人権尊重は政治面だけではなく、ビジネス面でも徹底されるべき課題であることを強調。その上で、自国内のビジネスが、国際法に基づいているかを主体的に検討し、一貫した取り組みを実施すべきと説明した。同レポートは、被占領国が、企業に対し一貫性のないアプローチをするが故に、認識の差が生じ、結果的に意図せず人権を侵害する企業を容認しているケースが多いと指摘。被占領国が最低限の基盤を整えることは、人権被害の軽減につながると示した。
次に、企業に対しては、人権デューデリジェンスを実施する場合には、占領地域に適用されるさまざまな国際法を考慮し、包括的な法的責任を理解する必要があるとした。また、占領国家が有する権力のバランスや範囲を理解することも極めて重要であり、活動をする上で、法務、金融、商業等に関するリスクを十分に把握することがトラブル回避に繋がるとした。
同ガイダンスは、一般的に、紛争の影響を受けた地域は虐待リスクが高まり、占領が長期的に継続する地域に事業進出し、人権を擁護することは容易ではないと言及。その上で、経済活動を行う企業には、徹底的に強化した人権デューデリジェンスを義務付けることが必要だと呼びかけた。
同ガイダンスは、紛争および紛争後の状況におけるビジネス課題を協議するため、国連のビジネスと人権に関するワーキンググループ(United Nations Working Group on Business and Human Rights)提出された。
【参照ページ】New report: Business and Human Rights in Occupied Territory: Guidance for Upholding Human Rights
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