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【国際】政府系金融機関の連合会、パリ協定での投融資基準厳格化で共同声明。JICAとADBは猛反発

 世界の政府系金融機関全460機関が集う初の会合「Finance in Common Summit(FICS)」が11月9月から12日まで仏パリで開催され、パリ協定の達成に向け投融資基準を厳格化していく共同声明を最終日に発表した。しかし、当初予定された石炭関連に対する投融資禁止という文言については、日本の国際協力機構(JICA)や、日本政府から総裁を出しているアジア開発銀行(ADB)が強く反発し、先送りとなった。

 FICSは、政府系金融機関(Public Developmetn Banks: PDBs)の結束に向け、フランスのエマニュエル・マクロン大統領とアントニオ・グテーレス国連事務総長が提唱し発足。世界開発金融機関連合会メンバー(WFDFI)と国際開発金融クラブ(IDFC)が事務局を務め、フランス開発庁が会合を主催した。FICSに参加した450機関は、全体で年間2兆ドル(約210兆円)の投融資を行っており、民間も含めたファイナンス額全体の約10%を占める。

 FICSのエグゼクティブコミッティの構成機関は、WFDFIに加盟している各地域の開発金融機関協会であるアフリカ開発金融機関協会(AADFI)、アジア太平洋開発金融機関協会(ADFIAP)、イスラム開発銀行加盟国家開発金融機関協会(ADFIMI)、ラテンアメリカ開発金融機関協会(ALIDE)、欧州長期投資家協会(ELTI)の他、欧州開発金融機関協会(EDFI)、欧州公的銀行協会(EAPB)、国際開発金融クラブ(IDFC)、D20長期投資家クラブ(D20-LITC)や、国際開発金融機関(IDFI)からは欧州投資銀行(EIB)、欧州復興開発銀行(EBRD)、欧州評議会開発銀行(CEB)、アフリカ開発銀行(AfDB)、イスラム開発銀行(IsDB)、米州開発銀行(IDB)、新開発銀行(NDB)、国際農業開発基金(IFAD)、そして国際機関からは欧州委員会、国際通貨基金(IMF)、経済協力開発機構(OECD)、国連経済社会局(UNDESA)、国連環境計画(UNEP)、国連開発計画(UNDP)、緑の気候基金(GCF)、世界適応センター(GCA)で構成されている。アジア開発銀行(ADB)、アジアインフラ投資銀行(AAIB)、世界銀行グループは、エグゼクティブコミッティになっていない。

 日本政府の立場としては、アジア太平洋開発金融機関協会(ADFIAP)に、国際協力銀行(JBIC)、日本政策投資銀行(DBJ)、日本政策金融公庫、日本経済研究所の4者が加盟。また、国際協力機構(JICA)が、国際開発金融クラブ(IDFC)に加盟している。

 今回の初会合に先立ち、IDFCとGCFは11月6日、気候変動対策のために政府系金融機関が果たすべき役割を提唱したレポートを発表。「市場の失敗」や「金融制約」と呼ばれる市場メカニズム型の発展の欠点を、政府系金融機関が補う重要なプレーヤーと位置づけ、気候変動対策のためには非常に役割を担っていることを強調した。

 また欧州の政府系金融機関のグループは10月、石炭火力発電への投融資を禁止する共同声明案も作成。11月5日には、欧州開発金融機関協会(EDFI)が先行して声明を発表し、石炭採掘、原油採掘、単独のガス採掘、一般炭(石炭)輸送、原油パイプライン、石油精製、石炭、HFO、ディーゼルを燃料とする火力発電所の新設と改修に関するプロジェクトと、石炭採掘及び石炭火力発電の増強を計画する企業への投融資を2030年までに禁止することを表明していた。

 しかし、欧州の政府系金融機関複数から提案されていた石炭関連への投融資禁止(ダイベストメント)に関しては、アジア開発銀行が猛反発。最終的に共同声明の文言が緩められ、「(2021年の)COP26の観点から石炭ファイナンスを禁止する明確な方針等を含め投資基準の厳格化に向けて今後作業を進める」となったが、この文言でも国際協力機構(JICA)は反対したという。

 最終的に同共同声明に署名したのは、世界開発金融機関連合会メンバー(WFDFI)、アフリカ開発金融機関協会(AADFI)、アジア太平洋開発金融機関協会(ADFIAP)、イスラム開発銀行加盟国家開発金融機関協会(ADFIMI)、ラテンアメリカ開発金融機関協会(ALIDE)、欧州長期投資家協会(ELTI)、欧州開発金融機関協会(EDFI)、欧州公的銀行協会(EAPB)、国際開発金融クラブ(IDFC)、D20長期投資家クラブ(D20-LITC)、アフリカ開発銀行(AfDB)、イスラム開発銀行(IsDB)、欧州投資銀行(EIB)、欧州復興開発銀行(EBRD)、欧州評議会開発銀行(CEB)、国際農業開発基金(IFAD)。アジア開発銀行(ADB)、アジアインフラ投資銀行(AIIB)、米州開発銀行(IDB)、新開発銀行(NDB)は署名を見送った。

 今回当初計画していたコミットメントを全ては達成できなかったIDFCは11月12日、独自の声明を発表し、今後もIDFCの加盟機関の結束や、COP26に向けたコミットメントレベルの強化を進めると発表した。

 ADBとJICAは今回、世界規模で石炭火力発電所への投融資を禁止する試みについては阻止することに成功したが、今後も引き続きFICS、IDFC等の業界協会からもプレッシャーを受け続けることになる。

【参照ページ】All Public Development Banks gather for the first time ever at Finance in Common Summit
【共同声明】JOINT DECLARATION OF ALL PUBLIC DEVELOPMENT BANKS IN THE WORLD
【参照ページ】Development banks make landmark climate pledge, but no fossil fuel phase out
【参照ページ】The International Development Finance Club and the Green Climate Fund join forces to support Public Development Banks in financing the green transition
【レポート】A strategic alliance to realize the full potential of public development banks in financing the green and climate-resilient transition
【参照ページ】EDFI Statement on Climate and Energy Finance

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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