英財務省は2月2日、英ケンブリッジ大学のパーサ・ダスグプタ経済学名誉教授率いるチームがまとめた生物多様性と経済の関係性を包括的に分析した「ダスグプタ・レビュー」の最終報告書を発表した。2020年4月に中間発表をまとめていた。今後の英国政府及び世界にとっての生物多様性と経済に関する羅針盤となる。
ダスグプタ委員会は2019年に発足。財務省の支援の基、大学教授等が多数結集したチームに加え、国際機関やNGO、企業もアドバイザリーパネルとして参画して検討を行った。レポート作成には、世界銀行、世界経済フォーラム(WEF)、経済協力開発機構(OECD)、国連環境計画(UNEP)、アフリカ開発銀行(AfDB)、米州開発銀行(IDB)、イングランド銀行、シティ・オブ・ロンドン・コーポレーション、グリーンファイナンス研究所(GFI)、ニュージーランド準備銀行、ストックホルム環境研究所、世界自然保護基金(WWF)、ロンドン自然史博物館、世界資源研究所(WRI)、マース、エーオン等も協力した。
同レポートは、自然資本の状況、生物多様性と生態系サービスが経済活動に果たす役割、生態圏の破壊、人間活動が生態圏に及ぼすインパクト、経済学上の制約モデル、生物多様性に関するリスクと不確実性、法規範、外部性と規制、コモンプール財(公共資源)マネジメント、人間の消費と人口増加の慣行、世代を超えたウェルビーイング、生物多様性の価値評価、サステナビリティ評価と政策分析、会計モデルとインクルーシブ・ウェルス等までをカバーし、総ページ数は606ページにも及ぶ。
同レポートは、提言として、人間社会の需要は、持続可能な自然アセットの供給を超えるべきではなく、そのため自然保護区面積の拡大、自然を軸としたリューションへの投資拡大、消費や生産によるダメージの防止等を通じて、自然アセットの供給量そのものも増やしていく必要があると指摘。会計制度の中に、自然資本の考え方を導入する等の、大きな測定手法の変化を勧めた。特に金融と教育を変化させる必要があると分析した。
英政府は今後、ダスグプタ・レビューの内容に基づき、政策や法規制を検討していくという。WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)は同日、ダスグプタ・レビューの内容を、ビジネス観点から要約した要約文書も発表している。
【参照ページ】Nature is a blind spot in economics that we ignore at our peril, says Dasgupta Review
【参照ページ】New WBCSD Business Summary highlights main points from the Dasgupta Review
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