ブラジルのミナスジェライス大学(UFMG)、Instituto Centro de Vida(ICV)、森林農業管理認証機関(IMAFLORA)の共同調査チームは5月18日、アマゾン熱帯雨林と、ブラジル北部4州に広がる「マトピバ」地方の低木地帯セラードで実施されている熱帯雨林や森林の破壊の94%が、違法な伐採によるものとする調査結果を発表した。日本政府は、安倍政権時代の2016年、マトピバ地方での農業振興と輸送用のインフラ網、港湾の整備で協力する覚書をブラジルと締結している。
マトピバ地方は、マラニョン、トカンチンス、ピアウイ、バイアの4州にまたがる広大な地域で、大豆やとうもろこしの農業や食肉畜産が盛ん。同地方の開発では、2014年8月に当時の安倍晋三首相とルセフ大統領が開発協力で合意。ブラジルのアブレウ農牧・食料供給相と梅田邦夫駐ブラジル大使が2016年、農業振興と輸送インフラ整備の覚書に調印した。マトピバ地域は、もともと貧しい地域で、賃金の安さから近年、大規模農業開発が進展してきた。
(出所)農林水産省(2015)
今回の調査は、ブラジル国立宇宙研究所(INPE)の人工衛星データベース「PRODES」と、農家の政府開発許可「ASV」データベースを照合し、森林破壊地域でのASV取得状況を確認した。ASVデータベースは、法定の管理要件を大きく下回る状態で、情報の精度も低いものの、現状把握できるレベルでの照合を敢行。全くデータベースが開示されていない5州に対しては、情報アクセス法に基づく開示請求も行った。その結果、2020年前半までの状況で、全体の94%でASVの取得が確認できず、ブラジル法に基づき違法伐採となっていることがわかった。調査では、世界自然保護基金(WWF)のブラジル支部も協力した。
(出所)ICV
今回の調査では、農業慣行だけでなく、政府のデータベース整備も含めて課題が多いことが浮き彫りとなった。ブラジル産の農作物に依存している企業にとっては、著しい森林破壊関与リスクがあり、強力なサプライチェーンマネジメントが求められる。
【参照ページ】An unprecedented study shows illegalities in 94% of converted ecosystems in the Amazon and the MATOPIBA region
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