EUのイノベーション基金は7月27日、低炭素技術開発の小規模プロジェクト支援プログラムで、第1弾助成先を決定した。32の小規模プロジェクトに総額1億1,800万ユーロ(約150億円)、15の大規模プロジェクトに総額440万ユーロ(約5.7億円)を助成する。
イノベーション基金は、EU二酸化炭素排出量取引制度(EU-ETS)での収益を財源とするファンドで、2020年から2030年までに総額200億ユーロ(約2.6兆円)の助成金を拠出していく計画。EUは、EU-ETSでは、企業に排出量を抑制させつつ、さらにイノベーション基金で、革新的な技術開発を推し進め、EUの技術競争力を確保しようとしている。2019年に基金を創設し、助成申請を受け付けてきた。運営は、EUの欧州気候・インフラ・環境エグゼクティブ・エージェンシー(CINEA)と欧州投資銀行(EIB)。
イノベーション基金への申請応募は、大規模プロジェクトと小規模プロジェクトを別立てて受け付けており、2021年中に各2回募集する。助成では、大規模プロジェクトに対しては、追加資本コストと運用コストの最大60%、小規模プロジェクトでは資本コストの最大60%を支援する。助成支給額の40%は、プロジェクトの完全開始前に、事前に設定されたマイルストーンに基づき支給される。残りの60%は、当初計画していた二酸化炭素排出量の削減が実証されてから支払われる。
第1弾の公募では、大規模プロジェクトでは、応募要件を満たしたものが311件、小規模プロジェクトでも232件集まった。大規模プロジェクトは3月に70件が1次審査を通過。今回、大規模プロジェクトと小規模プロジェクトの、第1弾助成先が決定した。
小規模プロジェクトの応募案件は、二酸化炭素排出量の多い業種での革新技術が125件。炭素回収・利用・貯留(CCUS)も含む。そのうち3分の1が水素関連、6分の1がバイオ精製。また、再生可能エネルギー電力や再生可能エネルギー熱が60件。そのうち半数が太陽光エネルギー。その他、バッテリー等が50件。
今回採択された案件では、EU加盟国のうち14ヶ国、またアイスランド、ノルウェーの企業も対象となった。分野では、バッテリーやエネルギー貯蔵が9件、水素が4件、再生可能エネルギー熱が3件、太陽光エネルギーが3件、風力エネルギーが2件、バイオ燃料・精製が2件、紙・パルプが2件、ガラス・セメント・建材が2件、化学が2件、鉄鋼が1件、非鉄金属が1件、二酸化炭素輸送が1件。今後、欧州委員会で、個別案件の最終判断が行われる。
大規模プロジェクトでは、15件の助成先が決定したものの、正規の助成としては成熟度合いが小さいとし、採択が見送られ、欧州投資銀行(EIB)の助成支援策として扱われることとなった。イノベーションファンドの第2弾に再応募することは可能。今回採択された1件は、バッテリー・エネルギー貯留が5件、水素が2件、化学が2件、バイオ燃料・精製が2件、CCUSが2件、太陽光エネルギー1件、船舶低炭素化が1件。
欧州委員会は7月8日、第2弾の公募日程を発表。大規模プロジェクト向けは10月26日、小規模プロジェクト向けは2022年3月から公募を開始する。
【参照ページ】EU invests €122 million in innovative projects to decarbonise the economy
【参照ページ】First Innovation Fund call for small-scale projects: 232 applications for the EUR 100 million EU funding for small clean tech projects
【参照ページ】First Innovation Fund call for large-scale projects: 70 projects invited to submit full application
【参照ページ】Innovation Fund: Commission announces planning of the next calls for proposals
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