欧州委員会は4月1日、EU二酸化炭素排出量取引制度(EU-ETS)からの収入を財源とするEUイノベーション基金を通じ、大規模プロジェクト7件に対し、総額11億ユーロ(約1,500億円)の助成を決定した。全体で操業開始後10年間で7,600万t以上の二酸化炭素排出量削減効果がある。
イノベーション基金は、企業や公的機関に対し、次世代の低炭素技術開発・導入に対する財源として機能している。欧州気候・インフラ・環境執行機関(CINEA)が執行機関となり、また、欧州投資銀行(EIB)も本格的な適用には至っていない有望なプロジェクトにプロジェクト開発支援を提供している。
決定した7件のプロジェクトは、
- Kairos@C:ベルギーのアントワープ港で、二酸化炭素を回収、液化、輸送、永久保存する欧州最大インフラ構築を目指すプロジェクト。Kairos@Cは、操業開始後で1,400tの二酸化炭素を回収する予定
- ストックホルムでのBECCS:スウェーデンのストックホルムにある既存のコンバインドサイクル(熱電併給)型バイオマス発電所に、バイオエネルギー炭素回収・貯留(BECCS)施設を建設。二酸化炭素回収と熱回収を組み合わせ、操業開始から10年間で783万tの二酸化炭素排出を回避できる予定
- ハイブリット実証:スウェーデンのオクセロスンド及びゲルリバレで実施する水素還元製鉄の実証プロジェクト。グリーン水素を活用し、操業開始後10年間で、1,430万tの二酸化炭素排出を回避できる予定
- エル・モレルでのエコプランタ:従来は埋立処分されていた廃棄物から欧州市場初のメタノール商業生産プラントを建設。年量23,700tのメタノールを生産し、非リサイクル原料に含まれる二酸化炭素の70%を回収する予定。最初の10年間で、340万tの二酸化炭素排出を回避できる予定
- K6プログラム:フランスのランブルで、欧州初のカーボンニュートラル型セメントを製造。大気中に放出されるはずの二酸化炭素を貯蔵する気密性の高いキルンと、低温炭素回収技術を組み合わせ、世界初の産業規模プラントを北海に建設。操業開始後10年間で810万tの二酸化炭素排出を回避できる予定
- タンゴ:イタリアのカターニアで、高性能な太陽光発電(PV)モジュールを製造するパイロットプラントを建設。生産能力は年間200MWから3GWへと15倍に拡大。操業開始後10年間で最大2,500万tの二酸化炭素を回避できる予定
- SHARC:フィンランドのポルボー製油所に、グリーン水素とブルー水素双方の生産プラントを建設。操業開始後10年間で、400万t以上の二酸化炭素排出を回避できる予定
イノベーション基金は、小規模プロジェクトへの助成金プロジェクトも運営。3月31日から第2回公募が開始されている。
【参考】【EU】イノベーション基金、低炭素技術開発支援先47件発表。排出量取引制度の収益金が原資(2021年8月2日)
【参照ページ】Commission awards over €1 billion to innovative projects for the EU climate transition
Sustainable Japanの特長
Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。
- 時価総額上位100社の96%が登録済
- 業界第一人者が編集長
- 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
- 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく ログインする※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら