英シンクタンクEnergy and Climate Intelligence Unit(ECIU)は6月13日、国、自治体、企業におけるネットゼロ目標設定の現状と傾向を包括的に評価した報告書「ネット・ゼロ・ストックテイク2022」を発表した。ECIUは、カーボンニュートラルを宣言した国や地方政府、企業の状況を追い続け、集計している。
【参考】【国際】世界のGDPの半分が2050年カーボンニュートラルを宣言済み。後進国ほどいち早く(2020年2月28日)
今回の発表では、カーボンニュートラルを宣言した国及び地方政府、企業の合計GDPが世界の約91%、世界のGHG排出量の約83%となったことがわかった。宣言したのは、128の国、235の都市、115の州と地域、702の企業、合計1,180の組織。
しかし、既存のカーボンニュートラル宣言の目標設定状況は、パリ協定の1.5℃目標を達成するために不十分と警鐘を鳴らした。目標設定、達成に向けたアクションの信頼性が欠如している傾向にあると分析。目標設定の量から質が問われる転換期であり、目標設定の標準化と厳格な運用が必要とした。
国別では、法制化などで設定されたカーボンニュートラル宣言の割合は、2020年12月の10%から2022年5月には65%に増加し、G20では19カ国が宣言済み。しかし、低所得国では、カーボンニュートラル宣言が出ていない国がまだ多い。
また、カーボンニュートラル宣言するための誓約、計画、促進、公開の4つの最低限の「スタートライン基準」を満たした国は、全体の20%のみ。スタートライン基準は、国連の気候変動キャンペーン「Race to Zero」での指標を参考にした。
【参考】【国際】気候変動Race to Zero、加盟基準を大幅厳格化。加盟日本企業86社にも大きな影響(2022年6月16日)
企業別では、世界上場企業2000社のカーボンニュートラルを掲げる割合は、2020年12月は20%だったが、2022年5月には35%の702社に増加。しかし、そのうちの65%はスタートライン基準を満たしておらず、50%は中間目標を掲げていない。
また、40%の企業がカーボンオフセットの利用を考慮しており、カーボンオフセットを明確に利用しないと回答した企業は2%未満だった。また、スコープ3の排出量含めた目標にしている企業は38%だった。
今後に向けては、2022年3月に発足した「非国家主体のネットゼロのコミットメントに関するハイレベル専門家会合」が、都市単位、企業単位でのネットゼロ目標の設定と達成に向けた運用を加速させる重要な機会だとした。
さらに、南半球の国や地域でのネットゼロ目標設定を促進するために、スキル開発と資金へのアクセスが必要と指摘。各国で企業への情報開示の導入が進んでいるように、企業に向けた規制も必要になるとした。
【参照ページ】Net Zero Stocktake 2022
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