英政府の移行計画タスクフォース(TPT)は11月8日、企業がカーボンニュートラルを実現するまでの達成計画開示ガイドラインと実施ガイダンスの原案を公表した。2023年2月28日までパブリックコメントを募集する。
英政府は、2021年10月に当時のジョンソン首相が英国の新たなカーボンニュートラル政策「ネットゼロ戦略」の一つとして「サステナブル投資ロードマップ」を発表。11月には国連気候変動枠組条約第26回グラスゴー締約国会議(COP26)の場で、英国が世界初のネットゼロ金融センターになるための施策として、移行計画タスクフォース(TPT)の創設を宣言していた。
【参考】【イギリス】政府、ネットゼロ戦略発表。2035年までに全電力で脱炭素化。農業イノベーションも(2021年10月20日)
英金融当局のFCA(金融行為規制機構)は2021年12月、英国の証券取引所の上場企業に対し、アニュアルレポートが気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)ガイドラインに基づく情報開示をしているか否かを「コンプライ・オア・エクスプレイン」型で明確に言及するよう求めるルール導入を決定。加えて、FCAの監督下にあるアセットオーナーと運用会社に対し、気候変動に関する機会とリスクの情報開示も義務化した。双方の新ルールは2022年1月1日に発効し、2023年に各機関投資家から初の情報開示が実施されることになっている。TPTのガイドラインは、機関投資家の情報開示の質を上げる役割を果たす。
今回TPTが発表した案は、企業のカーボンニュートラル達成までの計画を「トランジション計画」とし、高品質の開示ガイドライン(ゴールド・スタンダード)を定めたもの。策定に参加した機関は、英財務省、FCA、英気候変動委員会(CCC)、グリーンファイナンス研究所(GFI)、ロンドン証券取引所グループ(LSEG)、Aviva、CCLA、英国国教会年金理事会、カナダ年金基金投資理事会、リーガル&ゼネラル・インベストメント・マネジメント(LGIM)、ナットウエスト、ユニリーバ、オーステッド、GFANZ(グラスゴー金融同盟)、CDP、WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)、ShareAction、IIGCC、投資協会(IA)、イングランド・ウェールズ勅許公認会計士協会等。他にも、イングランド銀行、ビジネス・エネルギー・産業戦略省、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)、経済協力開発機構(OECD)もオブザーバー参加した。
策定されたフレームワークは非常に体系的なものとなっている。まずは野心的なゴールを開示した上で、実行戦略と他者を巻き込むエンゲージメント戦略の双方の開示を掲げた。さらに説明責任として、指標と目標、ガバナンスの2つについても開示を求めた。さらに、トランジション計画の報告を行う独立報告書を3年毎に開示し、その間の進捗状況はアニュアルレポートでの開示でも可としている。
今回のフレームワークの大きな特徴は、TCFDが主に長期的な財務影響の開示を要求するガイドラインなのに対し、TPTガイドラインは、長期的なカーボンニュートラル目標を達成するための、短期、中期、長期的な実行計画に重きを置いている点。そのため、そもそもカーボンニュートラルを実現することが大前提となっている。そのため、今回のガイドライン案では、TCFDとTPTの報告は明確にわけて行うことを要求している。
発表されたガイドラインと実施ガイダンスには、開示項目毎に細かい規定も設けており、非常に濃厚な内容。FCAは、TPTガイドラインと実施ガイダンスの完成を待って、今後2年で上場企業や金融機関向けの開示ルールを定める考え。さらに、ISSBやGFANZと連携し、国際的な開示基準にまで昇華させることを狙っている。
【参照ページ】UK Transition Plan Taskforce launches new ‘gold standard’ for best practice climate transition plans by private sector firms
【参照ページ】FCA’s new rules on climate-related disclosures to help investors, clients and consumers
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