2050年までの運用ポートフォリオのカーボンニュートラル(二酸化炭素ネット排出量ゼロ)にコミットするアセットオーナーのイニシアチブ「Net-Zero Asset Owner Alliance(NZAOA)」は1月31日、加盟機関に向け、投資先企業での具体的な短期削減目標を設定するためのガイドライン「Target Setting Protocol(TSP)」の第3版を発行した。
【参考】【国際】投資家団体NZAOA、ポートフォリオ短期CO2削減目標設定プロトコル第3版発行へ。国債等(2022年10月21日)
今回の改訂では、まず、国債に関するカーボンフットプリント(CFP)の算出ガイダンスを決定。国債のスコープ1は対象国の国内の排出量(輸出品に関連するものも含む)、スコープ2は海外から輸入した電気、熱、蒸気での排出量、スコープ3はスコープ2以外の輸入品に関連する排出量とした。その上で、購買力平価(PPP)で換算した米ドル建ての発行残高に対する保有割合が割り当てられる排出量となる。データは、OS-Climateのものを用いる。パリ協定と整合性のあるパスウェイでは、国連責任投資原則(PRI)のAssessing Sovereign Climate-related Opportunities and Risks(ASCOR)で開発していくため、目標設定の対象とすることは先送りした。
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さらに、削減目標設定の対象に、プライベートエクイティへの直接投資が追加。2023年までに目標設定を開始し、2025年までに全てのプライベートエクイティアセットを対象とすることが義務化された。
商業用不動産ローンの新規融資についても、EUのカーボンリスク不動産モニター(CRREM)が発表している「1.5℃国家パスウェイ」、または気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の1.5℃世界レンジのオーバーシュートなしまたは限定的オーバーシュートを用いた目標設定を段階的に行うことも義務化。2024年からは、新規投資に関する開示目標の対象となるポートフォリオの割合も報告することが求められる。
カーボンニュートラル目標の達成では、ジャストトランジション(公正な移行)の影響を考慮する義務が明記された。気候ソリューション投資目標を設定する場合には、一般的に気候変動に最も脆弱で、化石燃料依存から移行するためのリソースが少ない新興国に焦点を当てることが推奨された。
投資先での二酸化炭素除去(CDR)活用での排出削減に関しては、CDR活用なしでの排出削減を優先するというスタンスを明確化。安易にCDRに頼った削減を行うことを認めない姿勢を掲げた。
【参照ページ】Net-Zero Asset Owner Alliance raises expectations for members’ real economy impact with updated Protocol
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