
ESG評価機関世界大手各社が、EU域内の銀行に対し、欧州銀行監督機構(EBA)の気候変動開示ルール「ピラー3(第3の柱)開示」に向けたサービスを拡充してきている。金融リスクの対応のため、銀行を対象にした情報開示ルールが増えてきている。
EBAは2022年1月、「ESGリスクに関するピラー3開示」ルールに関し、導入テクニカル基準(ITS)の最終案を発表。2010年11月にバーゼル銀行監督委員会(BCBS)で採択された「バーセル3」に基づく、第3の柱の一環として、ESGリスクに関する開示ルールを導入している。同ルールは、EUのタクソノミー規則、サステナブルファイナンス開示規則(SFDR)、資本要求規則(CRR)で個別に掲げられている開示要求を統合したものとなっている。
【参考】【EU】欧州銀行監督機構、EUタクソノミーに基づく「グリーン資産レシオ」開示を提言。銀行と運用会社(2021年3月2日)
ITS最終案は、10種類の定量的テンプレートを用意しており、2023年から2024年にかけ段階的に開示義務が発生する仕組みとなっている。テンプレート1から4までが気候変動移行リスク、テンプレート5が気候変動適応リスク、テンプレート6から10までが緩和アクション(移行計画)に関するものとなっており、スコープ3排出量、タクソノミー整合性割合に関する開示は、2023年度の財務報告を2024年に行うタイミングから、それ以外の項目は2022年度の財務報告を2023年に行うタイミングから適用される。
これらの定量開示を行うためには、ファイナンス先の排出量データやタクソノミー整合性データが必要となる。そこで、ESG評価機関が銀行向けのデータサービスを強化してきている形。MSCIは2022年11月にピラー3開示支援ソリューションの提供を開始。ISSも10月4日、「ISS ESG」のサービスラインナップとして、ピラー3開示支援ソリューションの提供開始を発表している。
EBAはまた別途、EUの気候変動政策「Fit-for-55」における気候変動リスクのシナリオ分析の一環として、EU域内の銀行からの情報収集作業をも開始。7月には、信用リスク、市場リスク、不動産リスクに関する気候関連情報及び財務情報の回答テンプレート案も発表し、10月11日までパブリックコメントも募集している。銀行は2022年12月時点のデータを提出することが求められる。EBAはシナリオ分析結果を2025年第1四半期までに公表する予定。
【参照ページ】EBA publishes binding standards on Pillar 3 disclosures on ESG risks
【参照ページ】MSCI LAUNCHES SOLUTION FOR BANKS TO ALIGN WITH EBA ESG PILLAR 3 DISCLOSURES
【参照ページ】ISS ESG Launches EBA Pillar 3 ESG Solution For Banks
【参照ページ】The EBA consults on draft templates and template guidance to prepare its one-off Fit-for-55 climate risk scenario analysis
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