
国連食糧農業機関(FAO)は4月25日、畜産業における薬剤耐性(AMR)問題に対応するため、畜産場での抗生物質使用を抑制するための新たなイニシアチブ「持続可能な畜産システムの変革に向けた農場での薬剤ニーズの削減(RENOFARM)」の設立を発表した。
同イニシアチブは、畜産業で使用される抗生物質(抗菌薬)の使用量を削減することが目的。FAOの2025年までのAMR行動計画とワンヘルス・アプローチに基づき政策支援と畜産場への実践支援を行い、10年間で100カ国以上で活動の展開を目指す。
ワンヘルスは、環境、動物、人間の健康を包括的に検討し解決していくアプローチ。世界銀行は、ワンヘルスの経済的メリットも強調しており、ワンヘルス・アプローチの投資利益率は最大90%と見積もっている。国連環境計画(UNEP)、FAO、国際獣疫事務局(WOAH)、世界保健機関(WHO)で構成する「四者機関」は2023年12月、国連気候変動枠組条約第28回ドバイ締約国会議(COP28)の場で、各国でのワンヘルスに関するアクションを強化するため、「国レベルでのワンヘルス共同行動計画実践ガイド」を発行した。
【参考】【国際】四者機関、各国政府向けワンヘルス共同行動計画実践ガイド発行。COP28(2023年12月12日)
具体的な活動として、政府、畜産家、民間企業、その他のステークホルダーと連携し、「良い保健サービス」「適正な生産慣行」「適切な代替手段の提供」「インセンティブ」「コネクション」の5つを提供するとした。目標として、10年で100カ国での活動の展開、活動地域における動植物の保健サービス提供者等のステークホルダーの50%へ研修を提供すること、同イニシアチブへ加盟した国の80%以上が2022年にFAOが開発を開始したAMRモニタリングシステムへデータを提供することを掲げた。
同イニシアチブでは、既にインドネシア、ウガンダ、レバノンでパイロットプロジェクトが実施されている。インドネシアでは、AMR対策に関する関係者のスキルと意識を高めるために、コミュニティ単位でエンパワーメントを行う研修が展開されている。
今後は、9月にニューヨークで開催される2024年国連総会AMRハイレベル会合、11月にサウジアラビアで開催される第4回AMRのハイレベル閣僚会議で、同イニシアチブの施策展開ステップとコミットメントに関する合意を目指す。
また、FAOは9月末に初の開催となる動物用医薬品(アニマルヘルス)に関する世界会議を開催予定。AMR問題を克服し持続可能な畜産業へ転換するためのナレッジを共有し、具体的な今後のアクションを特定する。
【参照ページ】FAO launches global 10-year initiative to reduce the need for antimicrobials for sustainable agrifood systems transformation
【参照ページ】Reduce the Need for Antimicrobials on Farms for Sustainable Agrifood Systems Transformation
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