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【日本】国連人権理事会作業部会、2023年訪日調査報告書。地方や中小企業に大きな課題

【日本】国連人権理事会作業部会、2023年訪日調査報告書。地方や中小企業に大きな課題 1

 国連人権理事会(HRC)の国連ビジネスと人権作業部会は5月1日、2023年7月から8月に実施した訪日調査の公式報告書を国連人権理事会に提出した。内容は、2023年8月に日本記者クラブで発表した文書がベースとなっている。

【参考】【日本】国連人権理事会作業部会、日本企業の課題を多数指摘。記者質問はジャニーズ問題に終始(2023年8月5日)

 国連人権理事会は、総会が年に約3回開催されており、今回の訪日調査報告書は、6月18日から7月12日まで開催される第56期会合に向けて国連人権理事会に提出されたもの。

 同報告書では、国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)と国家行動計画(NAP)に対する国内の認識が、特に東京以外では一般的に不足していると指摘。地方自治体、企業、業界団体、労働組合、市民社会、地域社会の代表、人権擁護者等の関係者は、国家行動計画の策定と実施に十分に関与していないようであり、地方レベルの多くの関係者は、計画の存在を知らなかったと伝えた。その上で、幅広いステークホルダーを巻き込みながら、国家行動計画を改訂するよう示唆した。

 企業の責任に関しては、移民労働者や技能実習生の待遇、過重労働の文化、バリューチェーンの川上・川下における人権リスクのモニタリング・緩和する企業の能力等に課題があると言及。特に、中小企業におけるUNGPの認知度が低く、政府が中小企業に合わせたガイダンスとキャパシティビルディングを提供する必要性を強調した。総合商社と小売事業者は名指して努力が必要と伝えられた。

 政府の責任では、日本国内に国内人権機関が存在しないことに深い懸念を表明。企業における人権尊重を促進し、企業の説明責任を強化するための政府のアクションに大きなギャップを生み出していると指摘した。日本では、2022年6月に改正公益通報者保護法が施行され、従業員300人以上の企業に内部通報制度の確立を義務付けたが、内部通報ホットラインを整備している企業は従業員301人超1,000人以下の企業では57.4%、従業員101人超300人以下の企業では36%にとどまっており、自営業者(俳優、アーティスト、テレビタレント等)も除外されていることを憂慮した。通報への報復に対する刑事罰や行政罰を整備されていないことも課題とした。

 日本国内での高リスク分野では、女性、LGBTQI+、障害者、先住民族、部落を含むマイノリティ・グループ、子供、高齢者に焦点を当てた。テーマ別の懸念分野では、気候変動を含む環境問題による人権リスク、労働者の権利、メディア・エンターテイメント産業での人権リスク、サプライチェーンと金融でのリスク緩和の4つを挙げた。環境問題では、福島第一原子力発電所事故での作業員の労働安全衛生や強制労働、PFAS汚染、神宮外苑地区市街地再開発プロジェクトにも言及した。

 メディア・エンターテイメント産業での人権リスクについては、2023年8月の記者会見のときと同様、旧ジャニーズ事務所の話題にも触れ、数百人の所属タレントをめぐる性的搾取と虐待の疑惑に深い憂慮を表明。日本のメディア企業が数十年間、スキャンダルの隠蔽に関与してきたことにも苦言を呈した。また、記者会見後の状況を踏まえ、適宜の救済を希望している被害者のニーズを満たすには長い道のりであり、現スマイルアップが提供する金銭的補償が弁護士費用をカバーせず、被害者自身がその費用を負担しなければならないことは容認できないとした。スマイルアップは、弁護士や臨床心理士による面談の同席を無償で提供しているとされているが、同作業部会が関与した被害者からは、そのような申し出はなかったとの報告を受けていると伝えた。

 今回の報告書は、2023年8月の記者会見のときと同様、国連ビジネスと人権に関する指導原則に関する幅広い人権課題について見解を述べているが、日本のメディアは、相変わらず旧ジャニーズ事務所の話題にしか触れていないものが多い。

 また今回の報告書作成に関する日本政府の意見表明報告書も5月28日に公表された。日本政府の意見を記した報告書では、作業部会の最終報告書に記されていない政府の対策として、気候変動、障害者、外国人技能実習生等では政府のアクションが進められていることを付言。福島第一原子力発電所に関する事案では、労働者の安全衛生や強制労働に対しては、東京電力で実効性のある対策が進められていることを強調した。アイヌに関しても、海洋資源や国有林管理で実施されている政策をあらためて説明した。神宮外苑地区市街地再開発事業については、作業部会が収集した意見が偏っていると主張した。これらを踏まえ、冒頭では、「報告書草案が、情報源を示すことなく、作業部会がインタビューした当事者の主張を盛り込んでいることに懸念を表明する」と不満を伝えている。

【参照ページ】A/HRC/56/55/Add.1: Visit to Japan – Report of the Working Group on the issue of human rights and transnational corporations and other business enterprises

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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