
生物多様性のためのファイナンス財団(FfB)は7月3日、運用会社とアセットオーナー向けに、自然関連の目標設定フレームワークの第2版を発行した。対象アセットクラスは上場株式と社債。2023年11月に発行のベータ版を初版とし、初改訂を実施した。将来的には国債を含む他のアセットクラスにも拡大する。
【参考】【国際】FfB、自然目標設定フレームワークベータ版発表。運用会社とアセットオーナー向け(2023年12月2日)
同フレームワークは、目標設定ワーキンググループのFfB加盟44団体と共同開発。国連生物多様性条約第15回締約国会議(CBD COP15)で採択された昆明-モントリオール生物多様性枠組に即し、2030年までに生物多様性の喪失を抑止・再生させるため、投資家が目標を設定し、資金フローを誘導することを目的としている。
ベータ版(初版)では、目標設定枠組みとして、「開始目標(体制目標)」「セクター目標」「エンゲージメント目標」「ポートフォリオ・カバレッジ目標」を掲げていたが、大幅に改訂。ワークフローに沿った目標設定に移行させた。
具体的には、「開始目標(体制目標)」はそのまま維持。「セクター目標」「エンゲージメント目標」「ポートフォリオ・カバレッジ目標」の3つは、大きく再編し、事前段階としての「モニタリング目標」と、実際の投資運用及びスチュワードシップ行動に関する「ポートフォリオ目標」の2つに集約した。
モニタリング目標では、具体的なインパクトを設定するためのプロセスでの目標が盛り込まれている。内容には、投資先へのエンゲージメントを通じて達成するゴールの設定、エンゲージメント対象の特定、セクター関連KPIの設定、議決権行使方針の決定、エンゲージメントを通じた特定に結果に到達しなかった場合のエスカレーションフローの整備、年次開示の内容の決定等が挙げられた。但し、モニタリング目標については任意開示項目とした。
ポートフォリオ目標では、2030年目標として、投資先ポートフォリオ企業が具体的に達成すべきゴールに関する目標が盛り込まれた。内容には、森林破壊フリー方針設定企業の割合、科学的根拠に基づく目標ネットワーク(SBTN)に基づく淡水目標設定企業の割合、バージンプラスチックに関する目標設定企業の割合等を挙げた。
さらに対象セクターとして10優先セクターを特定した。選ばれたのは、石油・ガス・消費燃料、化学、金属・鉱業、紙・木材、自動車、消費財流通・小売、飲料、食品・農業、医薬品、電力。また準優先セクターとして、建材、容器・包装、航空、アパレル、消費財、ヘルスケア、半導体・半導体製造装置、ガス・インフラ、水インフラ、独立発電事業者、不動産を挙げた。加えて、目標設定の対象とすべき影響ファクターについては、土地利用変化、水消費量、土壌・水質汚染の3つを特定した。
目標設定のスケジュールについては、ベータ版(初版)では、「初心者トラック」と「上級者トラック」の2つをオプションとして用意していたが、統合し一本化。開始目標(体制目標)が検討開始から6ヶ月以内に目標を設定し、その後12ヶ月以内に達成。モニタリング目標は18ヶ月以内に目標を設定し、その後18ヶ月以内に達成。ポートフォリオ目標は、30ヶ月から36ヶ月以内に目標を設定し、2030年までに達成とした。
その上で、2024年以前にFfBに加盟した機関投資家に対しては、開始目標、モニタリング目標、ポートフィリオ目標のうち1つ以上の目標を設定し、2024年の実績データを2025年に開示することを必須とした。2024年に加盟した機関投資家には、加盟から2年以内の目標設定が必須とし、2026年12月31日までに同様に1つ以上の目標を設定し、2027年から開示を、2025年に加盟する機関投資家には、2027年12月31日までに同様に1つ以上の目標を設定し、2028年から開示することを推奨した。
今回の目標は、SBTNと国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP FI)と協議し、策定された。銀行に対しては、同ガイダンスの対象外だが、国連責任銀行原則(PRB)の目標設定ガイダンスを参照することが推奨されている。
【参照ページ】FFB FOUNDATION LAUNCHED THE SECOND EDITION OF THE NATURE TARGET SETTING FRAMEWORK FOR ASSET MANAGERS AND ASSET OWNERS
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